mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

平凡な日常の裏側に狂う生き方

2015-07-24 15:29:45 | 日記

 伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮社、2002年)を読む。「ラッシュ」というのが何を意味しているだろうと、考えながら読みすすむ。ラッシュ・アワーや通勤ラッシュというような、人の群れが押し寄せて、それに追われるような、「忙しない人生」だろうか。それともラッシュ・フィルムというような、「粗削りな」というか「編集作業の手が入っていない」、つまり、人間の意思が統御していない人生だろうか。rush。

 

 どれも違った。いやひょっとしたら、どれも当たっているかもしれない。退屈な繰り返される日々の中に起こる裂け目のような出来事、その組み合わせがあちらこちらで起きて、狂おしい。常軌を逸していることの中で人生の根っこにある真理性に気づいて、すべてを失くしていることのさわやかさを感得するみずみずしさ。lush。

 

 伊坂はlush の両義[生い茂る豊潤/酔っぱらい]を用いてタイトルをつけたようだが、rushのいくつかの意味を当てはめても通用する物語になっている。ま、通勤電車の中で読むのに手頃なお話しだが、この作家は、ちょっとした目利きのような人に対する視線をもっているから、退屈しないで読んだ。

 

 来週の山を実施するかどうか、むつかしいところにある。山小屋はすでに予約しているから、足を運べばいいのだが、台風12号が近づいて来そうな気配を見せている。のろのろと時速15km。当初、三日前は西から北へ方向を変えて、27日ごろ関東直撃の様子であった。台風一過の晴天になるかと期待していた。ところが、西への移動が続く。やっと今日あたり南大東島にある。沖縄を通過した辺りから北へ方向転換し、日本海へ入るらしい。そこで北東へ向かう。28日に能登沖あいと思っていたのが、鳥取の沖合をうろついている。となると、29日にも、南東に伸びた台風の腕が影響しては来ないか。なにしろ標高が3000mの高山帯だ。西1000kmの天候がじかに現れる。富士山頂では九州の荒れ模様がみられる。そういうことを考えて、落ち着かない。

 

 今日は、来月初めに北海道へ行く最後のミーティング。1人が車で先発するために、飛行機に積み込めないガスのボンベなどはそちらに引き渡さなければならない。ところが、頼んだ食事メニューがまだできていない。どれくらいの熱量をつかうか私は心配しているのだが、メニュー担当の相棒は、とんと気にしていない。まあいいか、三日くらいの間、湯だけ沸かせばいいと考えて、用意した。二の重さもあるが、若い時のようにやたらとハンドメイドにしない。軽ければ、お湯を注ぐだけで一食が出来上がる携帯食を用意すると、7食分で済む。停滞の予備食も含めて、10食分。約3kg以下の重量。半シュラフをシュラフカバーと組み合わせて済ませる。全体で12kg程度に抑えられれば、何とか元気に歩けるだろう。そんなことを考えながら準備をしている間が、愉しい。

 

 思えば、山歩きというのは(初めての山だとことに)想定通りにはいかないことが多い。なぜか、いつも不思議に思うのだが、二度目の山はラクなのだ。人様を案内する山の下見というのは、登山路の様子を見るよりも、一度目の苦しさを味わって二度目の難儀を楽にするためではないかとさえ、私は思う。北岳は何度か歩いた山だから、心配してはいないが、幌尻岳ははじめての山。ラッシュライフじゃないが、ラシュ・クライミング。もちろん忙しなく登るじゃなく、豊潤な登山。でも日常から外れて、とち狂うような世界に身を置くことになる。lushってところか。坦々と歩んできた人生のが、じつは山狂いであったというのも、話しとしてはオチがつく。

 

 そういうわけでこれから、山狂いのミーティングに足を運ぶ。