自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆アケビの開いた口

2005年10月21日 | ⇒トピック往来

   金沢大学の角間丘陵の谷あいに角間川が流れていて、川に沿って幅2㍍ほどの遊歩道がある。散歩がてらブラブラ歩いていると、アケビが口を開けているのを見つけた。真ん中の白いタネの部分を取り出し、しばらく口に含んで飲み込む。トロリとして甘い。幼いころ、病気で臥(ふ)せっていると、母親が片栗粉にお湯と砂糖を入れて溶いたものを飲ませてくれた。その時の食感を思い出した。

                     ◇

   友人たちとの忌憚(きたん)のない議論の中で最近「参院はもういらん」というテーマが出てくるようになった。9月11日の総選挙で連立与党が3分2以上を占め、たとえ参院で与党案が否決されても、その数で衆院単独でも法案を通すことができるからだ。参院無用論はこれだけではない。良識の府であるべき参院が、「特定の業界・団体のダミーと化しているのでは…」と皆が疑問を持ち始めているからだ。

    けさの新聞各紙でそのことを考えさせる記事が載った。特定郵便局長のOBらでつくる政治団体「大樹」が20日、都道府県支部長会議を開き、2007年の参院選では旧郵政省出身者などの独自候補を擁立することを確認した、という。郵政民営化法案が衆参で可決したにもかかわらず、法案に反対した現職議員をあくまで支持し、来る参院選では独自候補を擁立すると気勢を上げた。

    実際、大樹会の集票力は群を抜く。今回の衆院選で、民営化反対の旗頭・綿貫民輔氏(富山3区)は自民党候補に2万票の差をつけ再選を果たした。その原動力となったのは「大樹会」富山県本部だ。会員2600人。特定郵便局は、明治政府が郵便制度を創設した際、地域の名士や資産家に業務委託したのが始まりで、県内の郵便局297局のうち特定局は192局と6割を占める。選挙になると、いまでも地域の名士である会員が地縁血縁の幅広い裾野をフルに活用し票を集める。

   しかし、富山の友人はこう嘆く。「綿貫さんが勝ったのはこれまでの功績があったからこそ。ところが、富山が郵政民営反対の牙城で、時代の流れに逆行しているとのイメージで他から見られているかと思うと正直つらい」と。

    業界団体が全面的に出て、気勢を上げるのは自由だ。確かにアメリカでも、ロビーストと呼ばれる団体や業界の利益代表が上院や下院のロビーに陣取って、政治家に盛んに圧力をかけている。業界のダミーのような議員も大勢いる。日本ではどうだろう。先の選挙では、地縁血縁もないいわゆる「落下傘候補」が健闘し、地場の候補者に勝った選挙区(静岡7区、東京10区など)もあった。政党の政策やポリシーが重視され、利益誘導型の政治家に有権者は期待しなくってきている。来る参院選では、インターネットの活用が「解禁」され、その傾向はさらに強まるだろう。そしてこの議論の行き着く先が参院無用論なのである。「機能しなくなった政治制度をリストラせよ。衆院だけでよい」と。

                                   ◇

        金沢大角間キャンパスの遊歩道でアケビを手にして、ある俳句を思い出した。高名な俳人だったか、学校の恩師だったか、作者は思い出せない。脳裏に浮かんだままを記す。

口を開け 手招き揺れる アケビかな
                       ~詠み人知らず~

⇒21日(金)午後・金沢の天気     くもり

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