自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★里山の奇観

2005年10月18日 | ⇒キャンパス見聞

  「自在コラム」で紹介している金沢大学五十周年記念館「角間の里」を向かいの山から眺めると、ちょっと絵になる。バックの林、館の前の畑など実に納まりのよいアングルだ。

  この角間という地区は1600年代の前半、この上の戸室山から切り出された石を金沢に運ぶルートのひとつだった。石は築城に使われた。3代藩主の前田利常がここまで何度かわざわやって来て、石を運ぶ人たちにだんごを振舞って励ましたことから「だんご坂」ともそのルートは呼ばれた(森田柿園著「加賀志徴」から)。

  「角間の里」とは別の方角に目を転じると、モウソウ竹が勢いを増して里山を随分と侵食しているのが見える。竹林の茂みのあちこちでコナラが立ち枯れている。竹林の茂みができると森は暗くなり、養分がなくなってコナラなどは枯れるのだ。もともとモウソウ竹は人がタケノコ栽培のために植えたものだ。管理されていた時分は、「角間のタケノコ」と呼ばれたくらいにおいしいタケノコとして有名だった。それがいつしか里山に人の手が入らなくなって、モウソウ竹がのさばりだした。そしてタケノコの味も落ちた。

  これは竹のせいか、人のせいか…。植えたのは人だ。竹林が里山の問題点を象徴している。ついでに話をクマの出没問題に移す。クマは手つかずの奥山で生息している。 ところが里山に手入れがなくなりうっそうとした茂みとなると、 奥山と里山の境がなくなってしまう。 いわばクマが里山に迷い込んでくることになる。そして人に発見され、射殺される。 この意味でクマ問題も里山の象徴的な問題なのだ。これが国土の7割を占める山間地の「いま」の風景だ。能登半島の里山に育った私には奇観に映る。

 ⇒18日(火)午前・金沢の天気   くもり

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