自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★五輪も万博も「オワコン」か

2021年02月12日 | ⇒メディア時評

   けさの新聞やテレビのニュースで、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、女性蔑視と取れる発言の責任を取って辞任する意向を固め、後任をJリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏が引き受ける意向を示したと報じている=写真=。ニュースの流れを見ていて、なぜか後味の悪さを感じる。森氏の辞し方ではなく、メディアの論調、そしてオリンピックの開催そのものについてだ。

   森氏の発言をめぐって、メディア各社は最初から辞するべきという流れだった。これでよかったのか。新型コロナウイルスの感染拡大で、オリンピック開催そのものが危ぶまれているタイミングであることを多くの国民が理解している。このタイミングで森氏が辞することのダメージやデメリットを検証する報道はあっただろうか。この時期に辞めたら大変ことが起きるのではと心の中で案じている国民も多いのではないだろうか。森氏の発言を許すと言っているのではない、このタイミングでの「辞めるべき」一辺倒の論調に躊躇する。

   イギリスのBBCは「Tokyo 2020: Games chief's remarks about women 'absolutely inappropriate', says IOC」(2月10日付Web版)の見出しで、日本の首相とIOCが森氏の発言を非難するまで5日かかったが、これは双方にとって非常に恥ずかしく、ダメージの大きいエピソードとなった」と報じている。その一方で、「But others will worry that a change in leadership this close to the Games could make the job of organising them even harder.」(意訳:しかし、オリンピックに近い時期に指導者が交代すれば、大会を組織することがさらに難しくなるのではないかと心配する人もいるだろう)と、このタイミングでの辞任はいかがなものかと問うている。

   果たして、川淵氏にバトンタッチして、すっきりした気分で、オリンピック開催は可能なのだろうか。そもそも論にもなるが、国民はオリンピックの開催を心から歓迎しているだろうか。1964年の東京オリンピックは高度経済成長の真っただ中での開催だったので、国民のモチベーションも上がった。人口減少が続き、膨れ上がる赤字国債を誰が返済するのかという議論が出ているのに、さらに1兆6440億円の開催経費をかけてまでオリンピックを実施する意義はどこにあるのか。直近の世論調査でも、コロナ禍でオリンピックをどのようなカタチで開催すべきかとの問いで、「中止する」が38%で最も多く、「観客の数を制限」29%、「無観客」23%と続く(2月8日付・NHKニュースWeb版)。

   2025年開催の大阪・関西万博にしてもしかり。インターネットで情報が飛び交う時代に、万博で何か得るものがあるのだろうか。こうしたイベントで経済効果を期待すること自体、時代に合わなくなった「オワコン」(終わったコンテンツ)ではないだろうか。オリンピックにしても、万博にしても、「夢よ再び」の時代ではない。

⇒12日(金)朝・金沢の天気     はれ


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