自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★質問の価値

2016年02月09日 | ⇒メディア時評
   還暦も過ぎると、世の中の見方が変わるものだ。最近、同年代の友人の会話の中で「ニュース断ち」という言葉があった。「最近の新聞やテレビのニュースは気分が悪い。別に見なくてもよいので、ニュース断ちをしている」と言う。聞けば、ここ数か月テレビも新聞も見ていないのだとか。確かに、最近のニュースは気分はよくない。親の子殺し、SMAP騒動、元プロ野球選手の覚せい剤、北朝鮮による水爆実験・ミサイル発射、世の中が殺伐とした雰囲気だ。でも、私は言葉を返した。「ニュースを知識のワクチンだと思えば、苦にならないだろう」と。気分の悪いニュースも見ておけば、心の耐性ができる。もっと悪いニュースが起きて、心がインフルエンザに罹るよりはましではないか、と論を述べた。すると友人は「なるほど」と笑った。

   きょう(9日)は朝から雷鳴がとどろき、庭の木々もうっすらと雪化粧のたたずまいだ=写真=。さて、朝刊のニュースは何だろうと新聞を手に取る。目にとまったのが、高市総務大臣が8日の衆院予算委員会で、テレビ局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合には、「放送法4条」違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性もあると言及したという記事だ。民主党の議員が放送法の規定を引いて「政権に批判的な番組を流しただけで停波が起こりうるのか」との質問に答えたものだ。

   民主党の議員の質問の前段には、週刊誌報道で、安倍政権に批判的とされる番組の看板キャスターが相次いで降板するとあり、それを質問のネタにしたものだ。この記事を読んで思い出したのが、「椿(つばき)発言」だ。

   1993年、テレビ朝日の取締報道局長だった椿貞良氏(2015年12月死去、享年79)が日本民間放送連盟の勉強会で、総選挙報道について「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないかと報道内部で話した」などと発言した。当時、非自民政権が樹立され、細川内閣が発足していた。この内輪の会合の椿氏の発言が大きく新聞で報じられ、同氏は責任をとって辞任。その後、マスメディア関係者として初めて、国会に証人喚問され、テレビ報道の公平公正が問われた。このとき、初めて放送法違反による放送免許取消し処分が本格的に検討されたが、視聴者へのインパクトも大きいとして、行政処分にとどまった。

   つまり、民主党の議員が週刊誌報道を引用し、軽々と「電波停止はあるのか」と質問をしたが、こうした椿発言のような事例を踏まえての質問だったのか、どうか。降板が相次ぐ看板キャスターがこれまで、国会に証人として引っ張り出されるような国政を揺るがす発言したのであれば、その質問も価値があろう。

   しかし、週刊誌の記事引用で、電波停止を質問をするというのは少々軽い。質問の価値というのはどこにあるのだろかと疑ってしまった。

⇒9日(火)朝・金沢の天気    ゆき

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