自在コラム

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☆「生前退位」という人間味

2016年07月18日 | ⇒トピック往来
   今月13日夜のNHKニュースを視聴していて、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を天皇が示しているとアナウンスがあった。このとき初めて聞いた生前退位という言葉に戸惑ったものの、天皇陛下のなんとも人間らしい言葉かと感動したものだ。

  天皇陛下は82歳、皇后さまは81歳で、両陛下は実に多忙だ。報道によると、去年皇居で要人や海外の来客と面会したのは270件、全国植樹祭など地方訪問も75回あった。天皇の公務に関しては、憲法の第六条と七条に列記されている。「第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。「第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。二 国会を召集すること。三 衆議院を解散すること。四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。七 栄典を授与すること。八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。九 外国の大使及び公使を接受すること。十 儀式を行ふこと」と。

   このほかにも、公務として新年一般参賀、講書始の儀、歌会始の儀、天皇誕生日祝賀、園遊会、国賓として来日した外国の元首や王族との会見、外国の首相、大使らに対するご引見(謁見)、拝謁、宮中晩餐、宮中午餐、全国戦没者追悼式、日本学士院授賞式、日本芸術院授賞式、日本国際賞授賞式、国際生物学賞授賞式、全国植樹祭、国民体育大会秋季大会、全国豊かな海づくり大会、宮中でも神嘗祭、鎮魂祭、招魂祭、新嘗祭(大嘗祭)など。こうした公務や宮中の儀式はテレビでも放送される。昨年5月、石川県小松市で開催された全国植樹祭で、お手植えの行事に臨まれた両陛下の丁寧なしぐさをテレビでみて、感動したものだ。皇后さまは地べたに膝を着かれて、苗木を植えられたのだ。

   今回の生前退位は、こうした国事行為や公務を先々務めが果たせなくなることを見据えての天皇陛下のご意向だ、と。責任感から出てくる、人間味あふれるお気持ちだと考える。

   現在の公務の負担を軽減する手立てとして「摂政(せっしょう)」は今すぐにでも可能だ。憲法第五条では「皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ」とある。天皇がご病気など理由に皇太子が摂政として天皇に代わり公務を執り行う(政を摂る)ことができる。

   天皇が生前退位にこだわるのであれば、皇室典範を改正して上皇(じょうこう)になることは可能だ。上皇は天皇を退き、死するまでの地位をいう。そうなれば、現天皇は「平成上皇」と称されることになるかもしれない。そのとき、果たして、上皇が皇位継承権を有するのかどうか、次なる難問が待っている。

⇒18日(祝)夜・金沢の天気  くもり

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