自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆土下座の記者会見

2016年01月17日 | ⇒メディア時評

  とても違和感を感じた謝罪会見だった。長野県軽井沢町で15日に起きたスキーバス転落事故(乗客の学生、運転手ら14人が死亡)で、バスを運行していた「イーエスピー」(東京都羽村市)の社長や営業部長ら3人が16日に本社で記者会見した様子が新聞やテレビで報じられた。

  この記者会見で、出発前の健康チェックやアルコール検査は法律で義務づけられているにもかかわらず、事故を起こしたバスの運転手に対する健康チェックを出発前にしていなかったことを明らかにした。しかも、そのチェックを社長自らが確認する予定だったが、「時間を勘違いして遅刻し、運転手が先に行った」と釈明していた。

  その記者会見の最後、午後4時40分いきなり社長ら3人が土下座を始めたのである。テレビの画面で見る限りで、顔を真っ赤にした社長は涙を流しながら床に額をつけ、「心よりお詫びを申し上げます」と。60秒余りの土下座だったろうか、その後も動かず、社員に引き離されるカタチで退出した。

  14人もの命が失われた大事故であり、土下座の謝罪は無理もないだろう。違和感を感じたのは、その土下座を会見で使った机の後ろ側で行ったことである。本来ならば、机の前に出てきて、カメラに向かっての土下座ポーズが本来の姿だろう。社長は土下座をしたものの、誰に向かっての謝罪かおそらく混乱して頭が回らなかったのではないかと想像した。

  この土下座で動揺したのは報道各社のカメラマンたちだった。社長らの土下座のポーズが机の下に隠れてしまい、慌ててカメラマンたちが前に出てきて、あるいは机の下から撮影するというハプニングだった。

  この事故報道でもう一つ、犠牲者の顔写真の入手にいかにフェイスブックやツイッタ-が役立ったかということが実感できた。中日新聞の例だと、死亡した12人の学生たちの全員の顔写真を掲載しているが、そのうち、8人の顔写真がインターネットからの引用である。フェイスブックが6人、ツイッターが1人、ホームページが1人の内訳だ。同紙は「※写真はフェイスブックから」などと引用元を明記している。

  一般的に考えれば、いくら引用元を明記しているとは言え、勝手に新聞社やテレビ局が掲載してよいのか、と思って不思議ではない。メディア側とすれば、動画投稿サイトやソーシャルメディアに掲載されている画像や画像の利用は、報道利用であれば、投稿者の許諾が得られない場合でも利用が可能との判断をしている。肖像権より報道利用は優先されるのである。投稿者本人が利用を拒否した場合でも、事件・事故に絡む報道利用であるならば、法律上での問題はない。メディアによっては引用元すら明記しないところもある。 ただ、読者や視聴者は顔写真を見たいか、見たくないかは別判断だ。

⇒17日(日)夜・金沢の天気   くもり


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