自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★TVマン、デフォルトの構図

2005年05月16日 | ⇒メディア時評
 テレビ業界の社員が高収入であることはすでに知られている。その高収入に憧れて入社をめざす学生も多い。概要を説明しておこう。民間のテレビ局の総売上高はざっと2兆円あり、そのうちの70%を在京の5つのテレビ局(フジ、日本テレビ、TBS、テレビ朝日、テレビ東京)が占める。関西と名古屋が20%、そしてローカル局が10%である。国の放送免許制に守られ、新規参入が難しいので、企業として高収益は保たれ、社員の賃金水準も非常に高い。かつての銀行によく似ており、テレビ業界は「最後の護送船団」と揶揄(やゆ)されたりもする。

 高収益の恩恵を一番受けているのが東京キー局の社員である。ヤフー・ファイナンスの企業概要を見ても、フジが平均39.8歳で平均年収1529万円、日本テレビが39.4歳で1481万円である。これは社員全体の平均であり、たとえば記者や番組ディレクターは時間外(残業)が無制限に近い状態、いわば「青天井」で支給されるはずである。30代で時給2200円ならば100時間の残業をしたとして、割り増しがついて月30万円ぐらいにはなる。年収で360万円も他のセクションの社員と差がつく。

 これは実際に起きている話である。あるテレビ局の労働組合が若手の社員=組合員を対象に「人生設計」の勉強会を催した。というのも、高収入を得ていながら、裁判所に自己破産の申し立てをする若手社員が目立つようになってきたからである。そのデフォルト(破産)の構図はこうだ。若手がクリエイティブ部門、つまり番組制作やニュース部門に配属されると、残業が先の「青天井」状態になる。2、3年もすると軽く1000万円近くの蓄えができ、人生に自信がつく。これを頭金に会社近くの都心の高級マンションを思い切って購入する。ついでに憧れのBMWも買う。ところが、5、6年目で業務・管理部門に異動になったととたんに残業が減り、ローン返済がサラリーを上回り、極端な話が自己破産に追い込まれるというケースである。

 また、ローンに負われた社員が残業代を稼ごうと仕事もないのに「先方からのアポ待ち」などと理由をつけて必死に机にしがみつく姿もあったり、モラル・ハザード(職業倫理の欠如)さえ招くケースもある。「若手社員が頻繁に組合の小口融資を利用し始めたら赤信号」とある管理職が嘆いた。もちろん、自己破産はほんの一部の現象であろう。しかし、これに似たケースはキー局だけでなく、ローカル局でも聞き及ぶ話である。高収益、高収入の体質に潜む「甘さの構図」でもある。

⇒16日(月)午前・金沢の天気 
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