自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「能登サザエ」シーズン終わり アートな「サザエハウス」

2023年10月01日 | ⇒ドキュメント回廊

   能登半島の真ん中に位置する志賀町で開催されるシンポジウムの事前打ち合わせのため、昨夜は町内のホテルに宿泊した。けさは午前7時30分に朝食を予約していたので会場に行いくと、バイキング料理がずらりと並んでいた。その中でも、思わず手を出したのがサザエのつぼ焼き=写真・上=。肝の先と貝柱と身の部分がうまい。そして名残惜しさも感じた。能登のサザエの漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月だ。きょう出されたサザエはきのう「9月30日」に採られたものだろう。あすから消えるメニューに違いない。

   能登ではサザエの貝殻の尖った部分を「ツノ」と呼んでいる。ただ、サザエにはツノのあるものと、ないものもある。さらに、そのツノは同じ長さではない。長いものと短いものがある。海流が速いところで採れるサザエのツノは長いと能登では言い伝えられているが定かではない。遺伝的な長さもあるのではないかと考えてしまう。ただ、ツノが長いほうが見栄えがいいので、ホテルでのサザエもつい、長いツノのものを選んで皿に入れた。

   サザエを芸術に仕込んだアーティストを思い出した。2017年の奥能登国際芸術祭で出品した、村尾かずこ氏作『サザエハウス』=写真・下=。珠洲市の海沿いの一軒の小さな小屋の壁面を膨大な数のサザエの貝殻で覆ったものだ。以下、このブログの2017年10月16日付「さいはてのアート<上>」の再録。

   「サザエハウス」の壁面をよく見ると、サザエだけでなく、アワビや巻貝の殻もある。また、同じサザエでも貝殻のカタチが違う。殻に突起がいくつもあるもの、まったくないもの、それぞれにカタチの個性がある。サザエそのものがその生息地(海底の岩場の形状など)に適応して形づくられた、完成度の高いアートなんだと改めて思えるから不思議だ。靴を脱いでハウスの中に入ると今度はサザエの貝殻に入ったような白色の曲がりくねった世界が広がる。

   入り口にいたボランティアガイドに、サザエの殻はどこから集めたのかと尋ねた。すると「全部で2万5千個、全部市内からですよ」と少し自慢気に。聞けば、アーチストの村尾氏との地元の人たちの打ち合わせで、今年(2017)6月から一般家庭や飲食店に呼びかけて集め始めた。貝殻の貼りつけ作業は7月からスタートし、作品のカタチが徐々に見え始めると、集まる数も増えた。当初から作品づくりを見守ってきたというボランティアガイドは「サザエの中身は食べるもの、殻は捨てるものですよ。その殻が芸術になるなんて思いもしなかった。殻を提供しただけなのに地元は参加した気分になって、(芸術祭で)盛り上がってますよ」とうれしそうに話した。

   「サザエハウス」の外観は全体に白っぽい。カメラを向けていると、赤いスカートの女性が通り過ぎたのでシャッターを押した。赤と白のコントラストが鮮やかに映った。半島の先端、さいはてのアートがまぶしい。

⇒1日(日)夜・金沢の天気   はれ   


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