きのう24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見の様子をテレビで見ていて、多くの視聴者は「日本はなめられたものだ」と憤ったのではないだろうか。茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と。つまり、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと、堂々と会見で述べていた。
王氏の来日の目的はこれだと察した。当初は、中国の人権問題をめぐって日本は「日米豪印戦略対話(QUAD)」を推進する立場でもあり、それを切り崩すための来日が目的かと推測した。ではなく、「尖閣をめぐる宣戦布告」が目的だったと、この発言で直感した。では、次に中国が打ってくる戦術はなんだろう、と考える。日本の漁民によって中国の主権が侵害されているとの論法なので、おそらく中国側は尖閣に漁民を住まわせるための住居地をつくる。そして、通信機器や沿岸の整備を行い漁業の基地化を進めて既成事実化していくのではないだろうか。
中国は南シナ海の南沙諸島で「九段線」と称して広大な海域の領有権を主張し、人工島の建設を進めその主張を既成事実化しようとしている。同じ論法を今度は尖閣諸島で展開する布石ではないだろうか。ただし、軍事基地にすると、アメリカを刺激するので漁業基地化だ。菅総理は今月12日、バイデン次期大統領との電話会談で、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条(アメリカの対日防衛義務)の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があった」と述べていた。日米安保条約第5条をにらんで漁業基地化するというのが中国側のシナリオではないだろうか。
日本の首都で堂々と尖閣の領有権を主張したのだから。あとは粛々と次なる一手を打つだけだ。日本は新型コロナウイルスと東京オリ・パラの対応に追われている。そのうち大震災も発生するだろう、今が先手を打つチャンスと読んでいるのだろう。実にしたたかな、日本をなめた外交ではある。
外務省公式ホームページに掲載されている内閣官房領土・主権対策企画調整室の資料=写真=によると、1919(大正8)年冬、中国・福建省の漁船が尖閣沖で遭難して魚釣島に漂着した。その際、尖閣に住んでいた日本人の住民は中国漁民を救護した。当時の中華民国駐長崎領事は翌1920年5月に感謝状を贈ったが、そこには「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と記されている。100年前の史実である。
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