自在コラム

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☆オリンピックの政治利用って何だ

2021年08月02日 | ⇒トピック往来

   「オリンピックを政治利用してはならない」との言葉はこれまで繰り返し聞いてきた。先の東京都議選(7月4日投開票)でも、自民と公明は選挙公約にオリンピックを入れていなかったが、都民ファーストの会は「無観客での開催」を、共産は「中止」を、立憲民主は「延期または中止」をそれぞれ公約に掲げていた。無観客、中止、延期と言えども、オリンピックそのものを公約に掲げること自体が政治利用ではないのかと考える。

   では、オリンピック憲章ではどのように明記されているのか。憲章の50条2項ではこう記されている。「No kind of demonstration or political, religious or racial propaganda is permitted in any Olympic sites, venues or other areas.」(オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガンダも許可されない)と。これだけだ。「オリンピックの場」における政治的なブロパガンダなどは許されないと限定的な解釈だ。

          今回の東京オリンピックで上記の憲章に反するとして、IOCの勧告を受けたのが韓国選手団が選手村のバルコニーに掲げた横断幕だった。豊臣秀吉の朝鮮出兵に抗した李舜臣将軍の言葉にちなんだと連想させる、「臣にはまだ5000万国民の応援と支持が残っています」とハングルで書かれた横断幕だった。IOCは政治的宣伝と判断。横断幕は先月17日に撤去された(7月18日付・AFP通信Web版日本語)。

   そもそもなぜ、オリンピックの政治利用がこれほど敏感になったのか。ルーツはドイツで開催された1936年のベルリン大会だった。オリンピックがナチスドイツに仕切られ、総統だったヒトラーが開会宣言を行うなど、まさに大衆の熱狂と国威発揚、いわゆるポピュリズムを醸し出す道具として使われた。その3年後、ドイツはポーランドを侵攻し、第二次世界大戦が始まる。戦後、1980年のモスクワ大会では、ソ連によるアフガニスタン侵攻への抗議のためアメリカを中心とした西側諸国がボイコット、日本も同調し不参加だった。1984年のロサンゼルス大会では、ソ連が安全上の懸念を理由にボイコットした。

   オリンピックはまさに国内政治の道具や、国際政治の駆け引きの材料に使われてきた。では、次なるオリンピックの政治の争点はどこに焦点が当てられるのか。来年2022年の北京冬季オリピックではないだろうか。すでに、EU欧州議会は7月8日、北京冬季オリンピックついて、中国政府が香港や新疆ウイグル自治区での人権侵害を改善しない限り、政府代表や外交官の招待を辞退するようEUや加盟国に求める決議を採択している(7月9日付。時事通信Web版)。選手たちの北京ボイコットなどはおそらく、東京オリンピック・パラリンピック後に最大の課題になってくるのではないだろうか。

(※写真は、7月23日の東京オリンピック開会式の模様=NHK番組)

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