自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

2020年12月09日 | ⇒ニュース走査

   まもなく冬将軍が到来する季節。海も荒れると必ずニュースになっていた日本海沿岸への北朝鮮からの漂着船の記事を今季はまだ見ていない。今年は何かが起きているのか。上の写真は2018年1月16日に金沢市下安原町の海岸に打ち上げられた北の木造船だ。この目で確かめようと、現場に赴いたのは同17日午前。現場は防風林を抜けて100㍍ほど歩くと砂浜が広がり、警察の捜査で青いビニールシートが覆いかぶさっていたので、現物と分かった。

   全長16㍍、幅3㍍ほど。このような小さな船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、違法操業をしてたのか。船内をのぞくことができた。ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。警察発表によると、この船の中から7人の遺体が見つかり、さらに漂着船から15㍍ほど離れたところにさらに1人の遺体があった。もし、同じ乗組員なら計8人となる。冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでして漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか、など当時は思った。

   今季はどうか。第九管区海上保安本部の公式ホームページをチェックしても、北の漂着船はゼロだ。なぜ今年は木造船が漂着しないのか。単純な話で、能登半島沖のEEZ(排他的経済水域)で違法操業を行っているのは北朝鮮の漁船ではなく、中国の漁船なのだ。海上保安庁が監視活動を継続しているが、ことしに入り11月4日時点で、延べ4137隻の中国漁船に退去勧告を発している(11月5日付・NHKニュースWeb版)。

   10月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆周辺で大量の中国漁船が違法操業を行っている=写真・下=。去年までは北の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増している。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZというわけだ。中国の漁船は北の小型と違って大型の鋼船で、釣りではなく、底引き網で漁獲する。そして、北朝鮮から漁業権を買って同国のEEZで操業していると称して、日本のEEZで違法操業をしている(11月24日付・時事通信Web版)。

   違法操業の主役が交代し、これから何が起きるのか。水産庁が大和堆西部の特定の海域に入るのを当面、自粛するようイカ釣り漁船側に要請して、「日本のEEZなのになぜだ」と漁業者の反発を買った(10月20日付・朝日新聞Web版)。日本海の荒波が激しくなってきた。

⇒9日(水)夜・金沢の天気   くもり 


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