自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★メディアの当確の精度

2012年12月22日 | ⇒メディア時評

 このブログで何度か述べた衆院総選挙での「開披台調査」や「出口調査」が、今回の投開票日にその威力を発揮した。16日の投開票日は近くの投票場に行き、出口調査の様子を観察し、同日の21時から開票場で開披台調査の様子をつぶさに観察した。そして、その予想と結果を数字で比較した。

 テレビ朝日『選挙ステーション』では、20時34分に石川一区(金沢市)の出口調査の得票数をパーセントで発表していた。そのポイント。馳浩(自民)47.6%、奥田建(民主)23.4%、小間井俊輔(維新)19.3%、熊野盛夫(未来)5.5%と続いた。では、実際の得票率はどうだったのか。翌日の北陸中日新聞で掲載された確定票をもとにした獲得率は、馳浩47.87%、奥田建22.88%、小間井俊輔19.82%、熊野盛夫5.11%だった。馳の誤差はマイナス0.2、奥田プラス0.6、小間井マイナス0.5、熊野プラス0.4なのである。つまり、どの候補者も出口調査と確定票の得票率の誤差は1.0ポイント以下だったことになる。

  テレビ朝日『報道ステーション』での石川一区の出口調査が結果が流れたのは20時34分だった。同区の開票開始時間は21時30分だった。開票が始まる1時間ほど前に、テレビ視聴者は精度の高い「当選確実」の情報を得たわけである。テレビ朝日と朝日新聞は共同で9000ヵ所で出口調査を実施、54万人からサンプルを収集した。1ヵ所60サンプルである。調査員1人が10ヵ所回って調査したとて900人の調査員が動員されたことになる。投開票日だけでなく、期日前投票でも出口調査は行われていた。さらに、開票場での開披台調査では、石川の開票場だけでも70人余りが配置された。全国規模の調査で、その経費は億単位であろうことは想像に難くない。今回、テレビ朝日のフライング(当確を発表した後に落選)はゼロだった。調査の精度はそれほど高かったことになる。

 選挙報道と言えば、これまでNHKが圧倒的な強さ、つまり視聴率が高かった。では、今回はどうだったのか。ビデオリサーチ社が公表したデータでは、衆院選挙開票速報の特別番組で、関東地区の視聴率が最も高かったのは、NHK総合『衆院選2012開票速報』(19時55分~21時)17.3%、次はテレビ朝日『選挙ステーション・第2部』(22時~23時30分)10.1%だった。やはり、NHKが圧倒的に強い。ただ、今回、面白い現象が散見された。候補者はこれまで民放が早々と当確を打っても万歳をしなかった。NHKに当確が流れて、初めてバンザイの声を上げたものである。それが今回、民放の当確で選挙事務所が沸き立つ場面があった。たとえば石川三区では、20時過ぎに「北村茂男(自民)当確」を民放が報じ、20時20分ごろ万歳だった。NHKの当確打ちはさらにこの後22時半ごろだった。民放の当確打ちの精度が上がったということが徐々に認知されてきたということだろうか。

 でも、これでは各選挙事務所がメディアの開票速報で一喜一憂していると誤解されかねない。実は、陣営独自の票読みもある。独自の票読みというのは、たとえば北村氏の場合、対抗馬の近藤和也氏(民主)の地盤とも言える中能登地区のうち羽咋市と宝達志水町では投票時間が繰り上げられ、20時00分に開票作業が始まった。この2市町で北村氏が近藤氏と互角ならば、奥能登(輪島市など)を地盤とする北村氏の優位は確実となる。おそらく北村陣営の目利きが2市町の開票作業をウオッチして、「ほぼ互角」の一報をもたらした。事実、確定票(羽咋市で北村5990、近藤5456)は互角だった。民放の当確打ち後に、その一報がもたらされ、勝利のムードが盛り上がったのだろうと想像する。バンザイをもたらすものはメディアの速報もさることながら、陣営の独自の票読みというものがあるということを確認しておきたい。

※写真は、16日(日)21時40分ごろ、開票場となった金沢市中央市民体育館でのテレビ局による開披台調査の様子。ネットが張ってあるのは、これ以上身を乗り出さないように選管が配慮したもの。 

⇒22日(土)朝・金沢の天気   あめ 


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