自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「バイデン訪日」めがけた弾道ミサイルと核実験の可能性 

2022年05月23日 | ⇒メディア時評

   アメリカのバイデン大統領が20日からの韓国と日本の訪問中に、北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射、あるいは核実験に踏み切る可能性があるとアメリカのサリバン大統領補佐官は記者会見で述べたと報道された(5月19日付・NHKニュースWeb版)。アメリカによる衛星観測の結果、過去のICBM発射時に現れたのと同じ兆候(平壌近くの発射場所、発射装備、燃料供給、車両と人員配置など)が確認されたからだ(18日付・CNNニュースWeb版日本語)。

   ところが、訪韓中に発射はなかった。憶測だが、19日に金正恩総書記のかつての「後継者教育担当」とされた軍の元帥が死去。22日午前4時25分から国葬が営まれた。労働党機関紙「労働新聞」Web版(23日付)には、金総書記が棺を持ち先頭を歩く姿が掲載されている=写真=。国葬が営まれ本人が参列する状況下で、弾道ミサイル発射の指示は出せなかったのだろう。これまで、長距離弾道ミサイルの発射は本人の立ち会いのもとで行われていたからだ。

   では、きょう23日の日米首脳会談、あるいは、24日の東京での日米豪印(クアッド)首脳会合に向けて、弾道ミサイルの発射、あるいは核実験は可能性があるのか。北朝鮮では、新型コロナウイルスとみられる発熱症の感染拡大が止まない。金総書記は「建国以来の大動乱」と位置づけ、今月12日にロックダウンの徹底を指示した。国民にはワクチン接種が施されず、医薬品も不足し、医療制度そのものも貧弱とされる。国内の食糧は限られていて多くの人々は栄養失調の状態にあり、ロックダウンが徹底されれば、国民が瀕死の状態に追い込まれることは想像に難くない。常識で考えれば、この状態下で弾道ミサイルの発射、あるいは核実験はないだろう。

   しかし、WHOは北朝鮮にデータや情報の共有を求め、検査キットや医薬品、ワクチンなどを供給することを伝えたが、北朝鮮は「政府による決定」としてワクチン接種などを拒んでいる(19日付・ニューズウイークWeb版日本語)。国際社会の支援を受け入れれば、道義上からも弾道ミサイル発射や核実験はできないだろうが、薬草による治療などで自力更生の立場を貫いている以上はありうる。ここが北朝鮮の怖いところかもしれない。

   新潟日報Web版(22日付)によると、林外務大臣は新潟市内で講演し、北朝鮮への支援を検討する必要があるとの認識を示し、「あそこの国とは国交もない。だから放っておけばいいとはなかなかならない」と述べた。北朝鮮による拉致被害の原点でもある場所であり、支援を表明することで解決の糸口をつかみたいとのメッセージを込めたのだろう。気持ちは理解できるが、果たしてこのメッセージは伝わるのだろうか。

⇒23日(月)午後・金沢の天気     はれ

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