これは今回の日米首脳会談の最大の成果ではないだろうか。岸田総理はアメリカのバイデン大統領との会談後の共同記者会見(23日)で、来年日本で開催されるG7サミットを広島市で開催することの同意をバイデン氏から取り付けたと語った。そして、会見でのコメントは同選挙区の政治家らしい言葉だった。
「唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として、私は広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考えている。核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを世界に示し、バイデン大統領をはじめG7の首脳とともに平和のモニュメントの前で平和と世界秩序と価値観を守るために結束していくことを確認したい」(23日付・NHKニュースWeb版「共同記者会見・詳細」)
当地の広島県庁の公式サイトをチェックすると、湯崎知事=写真・上、左=も広島市で開催する意義について述べている。「ウクライナ侵略で損なわれた対話やルールに基づく国際協調を再び取り戻し、将来、ウクライナの人々が復興に向けて前進する際の『希望の象徴』にもなるものと考えています。核兵器廃絶に向けて、かつてないほど厳しい状況におかれている今だからこそ、広島で開催する意義が高まっていると考えます」
被爆地でG7サミットが開催されるのは初めてのことだ。2016年の「伊勢志摩サミット」終了後の5月27日、アメリカの現職大統領として初めてオバマ氏が広島を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花した。当時外務大臣だった岸田氏は原爆ドームなどについて通訳を介さずに英語でオバマ氏に説明を行ったことは知られている。史上初の原爆投下(1945年8月6日)で広島市では少なくとも14万人が死亡。3日後に長崎市でも原爆が落とされ、さらに7万4000人が死亡した。ただ、オバマ氏は献花の際、原爆投下について謝罪はしなかった。
オバマ氏が「ヒロシマへの道」をつけてくれたので、バイデン氏も「広島サミット」の開催には同意しやすかったのだろう。では、オバマ氏と同様に「献花はすれど、謝罪はせず」なのだろうか。オバマ氏が謝罪をしなかったのは、世論が背景があったからだ。アメリカでは原爆投下が甚大な惨禍をもたらしたものの、戦争を終結させたのだから正当性はあるとの声がいまだ根強くあり、オバマ氏は世論に配慮した。その世論をもう少し詳しく見てみる。
オバマ氏訪日のおよそ1年前の世論調査だ。アメリカの調査会社「ピュー・リサーチ・センター」は2015年4月に原爆投下に関する日米での世論調査の報告書「Americans, Japanese: Mutual Respect 70 Years After the End of WWII」をまとめている。アメリカ人の56%は「核兵器の使用は正当だった」と答え、34%が「そう思わない」と答えている=写真・下=。世代間格差もある。65歳以上のアメリカ人の70%が「正当だった」と答えているが、18歳から29歳の若い世代では47%と過半数を割る。また、共和党員の74%が、民主党員の52%が「正当だった」と答えている。調査から7年経つが、いまでも「正当だった」が根強いのかどうか、ピュー・リサーチ・センターのその後の調査は行われていない。
バイデン氏は「核なき世界」を理想に掲げている。今後、どのようなヒロシマ発言をするのか注目したい。そして、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は「電光石火」という表現で核攻撃をちらつかせている。こうした動きにアメリカ世論はどう反応していくのか。
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