自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★日本の報道自由度は「途上国」並みなのか

2022年05月06日 | ⇒メディア時評

   フランスのパリに拠点を置き、世界のジャーナリストたちのNGO組織「国境なき記者団」が発表した「世界報道の自由度指数2022」(180の国と・地域)で、日本のランクは去年より4つ下げて71位だった。自由度ランキングは日本は2010年に11位だったが、年々下がり、ついに71位だ。ちなみに、ほぼ同列に並ぶのは69位のケニア、70位のハイチ、72位のキルギスだ。発展途上国並みという位置づけになる。

   「報道自由度ランキング」は2002年がスタートで、メディアの独立性、多様性と透明性、自主規制、インフラ、法規制などを客観的に数値化して評価している。国内メディアもこのランキングをささやかに報じている。「日本は韓国やオーストラリアと同様に『強まっている大企業の影響力がメディアに自己検閲を促している』として去年から順位を4つ下げて71位に後退しました」(5月4日付・NHKニュースWeb版)

   民間組織によるランク付けとは言え、「国際的な評価」でもある。にもかかわらず、新聞・テレビのメディア各社の報道の扱いは小さい。日本新聞協会や日本放送連盟、NHKはこのランキングに関連して報道の自由を保障するよう声明や抗議文を政府に提出したというニュースは目にしたことがない。なぜか。

   国境なき記者団が日本の報道自由度について問題視しているのは、日本の報道機関のあり様についてなのだ。国境なき記者団の公式サイトの「2022年版」=写真=をチェックすると以下のような記載がある。「 Le système des clubs de presse (kisha clubs), qui n'autorise que les médias établis à accéder aux conférences de presse et aux hauts responsables, pousse les reporters à l'autocensure et représente une discrimination flagrante à l'encontre des journalistes indépendants ou étrangers. 」

   以下意訳する。「日本の報道機関(記者クラブ)のシステムは、確立されたメディアしか記者会見や政府高官にアクセスすることを許さず、記者を自己検閲に追い込んでいる。独立系または外国人ジャーナリストに対する露骨な差別を象徴している」。つまり、記者クラブ制度は排他的であり、自己検閲を記者に仕向けるシステムである、と。上記にある「大企業の影響力がメディアに自己検閲を促している」という事例は掲載されていないが、記者クラブがスポンサーである大企業に忖度して記事の自己検閲を行っている、という意味だろうか。

   記者クラブは新聞・テレビの記者による親睦団体だが、役所の記者会見の窓口機能などの役割をもっている。フリ-ランスや外国人ジャーナリストを記者会見から除外するといったこともない。ただ、「記者クラブ」という部屋は自治体や団体の施設内にあり、これが、外国人ジャーナリストには巣食うメディア・マフィアのサロンのようにも見えるのかもしれない。

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