今の中国の動きをメディアを通じてウオッチしていると「歴史ドキュメンタリー映画」を鑑賞しているようで、実に緊張感がある。あえてタイトルを付すれば、「中国ディストピア物語」だろうか。この場合のディストピア(dystopia)は自由が奪われる世界のたとえで、ユートピアと真逆な意味を込めている。
最近のディストピア・ストーリーをいくつか。沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船2隻が3月29日午前4時すぎ、日本の領海に侵入した。2隻は南小島の沖合で操業していた日本漁船2隻に接近する動きを見せたため、海上保安本部が巡視船を周囲に配備し漁船の安全を確保した。2隻は9時間にわたり領海内を航行したあと午後1時すぎに領海から出た。尖閣諸島の沖合で中国海警局の船が領海に侵入したのは、今年に入って11件目(3月29日付・NHKニュースWeb版)。
「ここは我が国の領海だ」と主張して、漁船を追いかけ回す。南シナ海でもベトナムやフィリピンの漁船に対して同じことをしている。そのうち、民兵が乗った何百隻という「漁船」が尖閣諸島に来て上陸。小屋など建て居座る。漁民を守るためと称して海警局も上陸し灯台など造る。これを機に尖閣の実効支配に入る。見事なストーリーだ。
ミャンマー国軍による弾圧強化で週末に市民100人以上が死亡した事態を受け、国連安全保障理事会は31日、イギリスの要請で緊急会合を開いた。ブルゲナー国連事務総長特使(ミャンマー担当)は、国境付近で国軍と武装勢力の戦闘が激化しており、「前例なき規模の内戦に陥る可能性が高まっている」と警告。「多重の破滅的状況」を回避するため共同行動を安保理に促した。一方、中国の国連大使は声明で、民主主義への移行を促しつつ、「一方的な圧力や制裁の訴えは緊張や対立を深め、状況を複雑化させるだけだ。建設的ではない」と主張した。安保理が今後、新たな声明を出す可能性はあるが、制裁など強力な措置で一致するのは難しいのが現状だ(4月1日付・時事通信Web版)。
香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国は国連の常任理事国の座にある。常任理事国であれば問題を起こしても国連では問われない。2020年5月、アメリカは中国による香港国家安全維持法(国安法)は人権侵害にあたるとして安保理の開催を提案したが、中国は「純然たる中国の内政問題だ」として拒否した。仮に安保理で決議がされても、拒否権を発動すれば成立しない。
中国のディストピア・ストーリーは国連に関与を強めることだ。WHOのテドロス事務局長の有り様をウオッチすれば一目瞭然だ。さらにその先に描く夢は「国連本部を北京に」だろう。チャンスが到来した。「アジア系住民人へのヘイトクライムが多発するニューヨークを脱出しよう」と運動を起こす。
4月1日、今年は自粛気味だがエイプリルフールの日。「中国ディストピア物語」を夢想してみた。(※写真は国連本部公式ホームページより)
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