自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆選挙とメディア-下

2013年07月23日 | ⇒メディア時評
  今回の参院選挙からインターネットを選挙運動に活用することがスタートした。「ネット選挙」の元年ともいえる。ただ、アメリカではすでに政治と民意をつなぐ媒体としてネットの選挙利用は定着している。

        デジタルとアナログの選挙運動が両輪で回るアメリカ

  アメリカにおけるネットの選挙利用として、よく引き合いに出される話が「オバマ大統領は先の大統領選で5億㌦をネットで集めた」である。2008年からオバマ氏とその陣営はフェイスブックの活用を始め、支持者がどのような書き込み内容に反応するのかを念頭に、工夫を重ねてきた。その極めつけが、「資金集め」である。「シカゴの集会に参加して、歴史へのチケットを手に入れよう」なとど呼びかけ、献金を募る。10㌦、25㌦、50㌦・・・1000㌦まで、支援するネットユーザーは献金が可能な額にクリックして、送金手続きを行う。すると集会の招待券がメールを送られてきて、集会に出かけるという手法だ。このやり方で450万人から5億㌦も集めたといわれる。

  日本では選挙期間中、有権者の家を訪ねて投票を依頼する戸別訪問は公職選挙法で禁止されている。これは、候補者が戸別訪問し、有権者に金を渡し「買収」をするのを防ぐためだ。ことほど左様に、かつて「選挙と金」の生々しい時代の記憶があるからだ。今日では、戸別訪問もできないようでは民主主義と言えないと叫んでもよいくらいだ。言いたかったのは、アメリカでは逆に、ネットでの政治献金を通じて、人々が政治への参加意識を高めている、ということだ。しかも、アメリカでは、インターネットでのキャンペーンを空中戦でたとえるならば、戸別訪問を地上戦と位置づけ、運動員が実績を訴えるパンフレット持参して個別訪問する。まるで、デジタルとアナログの選挙運動が両輪で回っている感じだ。

  ただ、問題はそうして集めた政治献金の使われ方だ。アメリカでは、テレビ討論が大統領を決めると言われるくらいにテレビは選挙におけるポジションが高い。しかし、 もう一つの空中戦であるテレビCMによるネガティブ・キャンペーン(中傷)もまた、テレビCMを通じて大量に流される。ロムニー陣営が「オバマの医療保険改革であなたの保険はなくなる」と流せば、オバマ陣営も「ビッグバードもロムニーに反対」とやり返す。ちなみに、財政立て直しのために、ビッグバードのキャラクターで有名な番組「セサミストリート」を放送している公共放送「PBS」の予算をカットするとロムニー氏が述べたことによる。こうしたネガティブ・キャンペーンは、2010年にアメリカ連邦最高裁判決で企業や団体による政治CMの自由が認められ、拍車がかかった。中傷CMが飛び交うと同時に、巨額の金が飛び交う選挙の構図である。

  日本でネガティブ・キャンペーンを流せば、流した方のイメージがダウンするかもしれない。

⇒23日(火)夜・金沢の天気    はれ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする