自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★選挙とメディア-中

2013年07月22日 | ⇒メディア時評
 第23回参院選挙は22日未明に、改選定数121の全議席数がすべて確定した。自民65、民主17、公明11、みんな8、共産8、日本維新8、社民1、諸派・無所属3。自公で非改選を含めて参院の過半数(122議席)を獲得したことになる。午後8時の投票の締切とほぼ同時に各テレビ局は選挙特番を始めた。「22日未明」を待たなくても、もうこの時点で「大勢」は決まった。さらにテレビ局は「衆参のねじれ解消」「民主幹事長の責任問題は」などとボルテージを高くした。

         テレビの当打ち、「評価しない」38%の背景

 開票作業はまだなのにもう「選挙は終わり大勢は決した。次はこうなる」などとまくしたてられても、有権者や視聴者にはピンと来ない。新聞社やテレビ局が世論調査などデータを積み上げ、「投票行動の流れ」を予め分析しているの知ってはいるが、いつもの当打ち速報と特番合戦には違和感を感じると思っている人も多い。

 そこで選挙期間中だった今月16日、「マスメディアと現代を読み解く」の授業で、学生たちに「はい」「いいえ」の二者択一で、「新聞社と系列のテレビ局が組んで、投票日に出口調査など実施し、テレビで開票速報を打ちます。あなたが有権者だとして、こうしたメディアの当打ちを評価しますか」とリアクション・ペーパー(感想文)で問うた。学生たちのほとんどは1年で有権者は少ない。回答してくれた182人の学生のうち「はい」(評価する)は102人、「いいえ」(評価しない)80人だった。パーセンテージで表せば、「62%」対「38%」である。これは意外だった。「評価しない」が予想より多いと感じた。

 ちなみに、「評価する」の主な理由は、「有権者は一票が反映されたか、速く正確な選挙結果を知りたがっている」「競争することで選挙速報におけるメディア全体の質が高まる」「かなり緻密、多角的な分析が行われており、速報は信頼できる」「当落について有権者の関心は高く、選挙特番は国民の間ではすでに定着している」「誤報のリスクを抱えながらも、速報するのはメディアのあるべき姿」などだった。

 逆に「評価しない」は、「当打ちはメディア側の自己満足にすぎない」「選挙速報を競うより、公的機関として投票率を上げる工夫が必要」「当打ちを急ぐことが果たして民主主義か、国民のためだと思わない」「誤報の可能性もあり、なぜそこまで速報にこだわるのか、そもそも疑問」「もともと速報は国民が望んだものとは思えない」。なかなか手厳しい。

 確かに「誤報の可能性もあり、なぜそこまで速報にこだわるのか、そもそも疑問」とする理由はテレビ局側にもある。昨年12月16日の衆院総選挙では、テレビ業界で「フライング」と称する当打ちの誤報が2件(日本テレビ系、TBS系)あった。それにしても「評価しない」38%の背景は何だろうと考えてしまう。

 回答してくれた学生のほどんどがまだ選挙権を有していない。とすれば、実際に一票を投じた有権者の「結果を知りたい」という実感が理解できないのかもしれない、と思ったりもする。あるいは若者たちのドライな感覚に立てば、「NHKが速報やっているのに、なぜ民放までもがワイワイやらなきゃいけないのか」などと思っているのかもしれない。これはむしろ、どのリモコンを押しても同じような番組というテレビ批判と考えていい。

⇒22日(月)未明・珠洲市の天気   はれ
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