自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★対岸の戦火

2010年11月24日 | ⇒メディア時評
 昨夜、中国に出張している知人からメールがあった。「北朝鮮の件の影響で、上海空港で飛行機の中に2時間以上缶詰になってました。おかげで仕事ははかどりましたが。地球環境うんぬん以前の問題が、まだ地球上には山積みのようですね」と。課題の優先順位から言えば、地球環境問題というのは、平和が達成されないと難しいとの感想だ。

 それにしても、「戦争」を伝えるメディアは内容もすさまじい。以下は、各紙の引用だ。

 「これは訓練ではない。実戦だ」と呼び掛ける放送が響き、何の前触れもなく砲弾が降ってきた。北朝鮮の朝鮮人民軍による砲撃を受けた韓国・延坪島。集落では次々と火柱が上がり、韓国メディアは、なすすべもなく逃げ惑う住民の様子を伝えた。(24日付・フヤーでの「共同通信」記事)

 韓国大統領府によると、李明博(イミョンバク)大統領は、北朝鮮の砲撃直後、韓国軍合同参謀本部とのテレビ会議で、「何倍でもやり返せ」と指示し、強硬姿勢を示した。3月の北朝鮮による韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」沈没事件では46人が死亡しており、再び被害を出す事態は看過できないからだ。(24日付・読売新聞インターネット版)

 24日の東京株式市場で、日経平均株価は朝鮮半島情勢の緊迫化を嫌気して3営業日ぶりに1万円を割って取引が始まった。(24日付・朝日新聞インターネット版)

 「戦闘状態」に入り、すべてのニュースが対岸(朝鮮半島)の火に目を向けている。メディアは、閣僚の放言など問題にしている暇はないとばかりに、報道姿勢が「戦時モード」になる。おそらくこれで、菅内閣はホッと胸をなでおろしているに違いない。そして、有事では現政権というのは結束して「磐石」になるものだ。

 結論を急ぐが、私は「メディアの限界は戦争にある」と思う。メディアの絶対価値というのがあって、何が何でも一面トップの記事はすでに決まっている。「大地震」「政権交代」「天皇崩御」、そ市て「戦争」だ。ニュースというのは、優先順位がつけられていること、内容が裏づけされていること、速報することで価値が高まる。しかし、ひとつのニュースが日常化されたかのように報じられると、取材する側も視聴・読者側もそのほかのニュース感覚がマヒしてくる。

 近年では湾岸戦争、同時多発テロ、イラク戦争などにわれわれは毎日、まるでエンターテイメントのように関心を示したものだ。こうした「戦争報道」の裏で、本来ニュースとして価値のあるも出来事がどれほど葬り去れたことか。

⇒24日(水)朝・金沢の天気 くもり
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