俳句を始めて、変わったことは、日常の生活に少しは注目するようになったことだ。今まで、まったく気づかなかったことに気付いたときの驚きがある。
たとえば、俳句で「木の実落つ」というのが、時々登場するのだが、我が家にも、どんぐりのなる木があったにもかかわらず、どんぐりの落ちる音なんて気づきもしなかった。
ところが、この音が実は、割に頻繁にあることに気付いた。何の音だろう、えっ、これが「木の実落つ」だと知ったときの驚き。
これこそ俳句の効用だろう。世界が広がった感じがした。今まで、庭に、幾らどんぐりがあろうと、落ちる音に気付いたことはなかったのである。
日常生活のなかでも、自然と、句を探している風がある。ちょっとした風景、出来事に敏感になる。これは、有り難いことである。
なにもかも見過ごして、ああ、退屈だと思うのではなく、自然のたゆまぬ営みに気付き、それをうまくいけば句にする。これだけのことで、生活は随分豊かになった感じがする。