デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

佐野眞一が殺したジャーナリズム

2013-06-02 10:38:05 | 買った本・読んだ本
書名 「佐野眞一が殺したジャーナリズム」
編著 溝口敦+荒井香織  出版社 宝島社 出版年 2013

なんとも後味の悪い本だった。ここでたたかれている佐野眞一の盗用・剽窃の事例、そして彼の弁解や詫び状を見て、いかに佐野というライターが盗用・剽窃を日常的に行い、それが癖になっているという浅ましい実像が浮き彫りにされ、またそれを執拗に盗用・剽窃の例を追い求めるライターの姿になりか怨念の深さを見て、さらにはそれを黙認する出版各社を見せつけられる、正直読まなければよかったと思った。
佐野眞一という人は嫌いだ。個人的に嫌な思いをしているということもある。ただ自分はライターとして優秀だという思い込みの激しさ、だから売れるネタは全部俺が書く、そのためにはライターたちをふる動員してリサーチをかける。そんな態度が一番嫌いだ。この人の盗用・剽窃の仕方、そしてそれに対する弁明を見ていると、自分が思っていた以下の書き手だったということもわかる。パソコンで書く以前にこんなにも軽々とコピペしているというその書き方に文章を練って書こうという姿勢が初めからなかったのではないかと思わざるを得ない。
ここで佐野を告発する人たちの鬼気せまるものにもなにか怖いものというか、ちょっとすぐに同調できないものもある。ノンフィクションの「巨人」に鉄槌を下ろすわけで、それは大手出版社にも攻撃の刃を向けることで、ある覚悟をもってのことだから故の高揚だとは思うのだが、ついていけなかった。
ただこれを自らへの警鐘としなければと思ったことも事実。コピペ、それも佐野のように姑息にアレンジしてしまうということは、いつでもできてしまう。そんな安易な道がいつでも書き手の前にはあるということも事実なのである。気をつけないと・・・

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 6月になった | トップ | アジサイ日誌3 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
クマさま (Yozakura)
2013-06-13 00:57:38
 この日の佐野真一に関する記事、そして5月下旬の「豊臣秀吉の出自と社会差別」に関する投稿は、何れも意欲的な書き込みで興味深く読了しました。クマさんの読書の嗜好と原稿執筆上の作法ないし立ち位置が明示されており、感想を差し上げたいと考えておりました。
 で、ふと気になって、著名な共有サイトを検索したところ、この佐野真一と東電OL事件に関する関連動画が、以前にも増して目白押しに展示されており、こちらも注意深く視聴しました。
 業界では著名なエピソードなのかも知れませんが、目の付け処が凄いですね。私もまた、別の角度から佐野の著作を読み直してみたいものです。
返信する
コメントありがとうございます。 (クマ)
2013-06-18 13:53:19
佐野眞一をめぐってあまり波及しないで終わりそうな感じですね。
なにより出版社がこの話題を黙過しようとしていることが、それを物語っているような気がします。
彼の剽窃問題は彼個人の問題ではなく、その本を出したところがこみとなって対応する問題だと思うのですが・・・・
返信する

コメントを投稿

買った本・読んだ本」カテゴリの最新記事

カレンダー

2024年8月
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

バックナンバー