論文タイトル「遠野郷の9日間-佐々木喜善、伊能嘉矩、そしてニコライ・ネフキイ-
著者 桧山真一
月のしずく第51号桧山真一追悼別冊
いつも送っていただいている「月のしずく」の別冊。今年2月に亡くなった桧山真一氏が令和2年度に佐々木喜善賞論文部門を受賞した論文と受賞したときのご本人の挨拶などもいれて特別に編集したもの。
ネフスキイが初めて遠野を訪れた時のことを、佐々木の日記をもとにその9日間を追ったもの、ネフスキイ研究にとっても、かなり重要な論考ではないかと思う。彼はこの9日間どれだけの人たちと交流を結び、そこでどんなことを吸収しようとしていたのかを、本人ではなく佐々木が書いた日記から浮かびだしている。民話を聞かせてもらいながら、なぜ方言のままそれを文字化しないのかとかなり強い疑義を呈していたところは注目していもいいだろう。この論考がそれだけに留まらず、佐々木の日記をつかったということで、学問的なことだけに留まらず、妻がネフスキイに親切にすることにちょっとジェラシーのようなものを感じていることなど、佐々木という男の人間性にも触れていくことにも共感がもてた。
それにしてもネフスキイにとっても佐々木にしてもある意味人生に大きな影響を与えることになった濃厚な遠野行きだった。