書名 「イルクーツク商人とキャフタ貿易-帝政ロシアにおけるユーラシア商業」
著者 森永貴子 出版社 北海道大学出版会 出版年 2010
ある論文を読んでいて、本書のことを知って、読むことになった。厚さ4センチほどになる大著なのだが、その半分は付録としてのイルクーツク商業に関する資料集となっている。キャフタ貿易によってイルクーツクがロシアの中で独自の商業発展をとげていくその過程を膨大な資料を駆使しながら、明らかにしていく。扱うテーマが商業となるから、俯瞰的にユーラシア商業という視点から見ていくことにもなり、キャフタ貿易で扱われる品目の変化など(輸出品としての毛皮、さらには輸入品としての茶の需要の高まり)からが、時代も見えてきて興味深く読ませてもらった。ただやはな自分に関心があるのは、漂流民たちがイルクーツクで生きた時代背景。いろいろ発見があった。一番の発見は善六がゴロヴニン事件に関わっていく時のイルクーツクの県知事がトレスキンというかなり悪名高い人物がイルクーツクの商人たちを締め上げていたこと、その中で善六の名づけ親となったキセリョフが、おそらくトレスキンによって殺害されたという事実だった。こうした専門書の中で知ることができる事実をやはりきちんと押えておかないといけない。
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