デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

革命記念日に生まれて

2020-08-25 22:58:11 | 買った本・読んだ本
書名 「革命記念日に生まれて 子どもの目で見た日本・ソ連」
著者 エルヴィン・ナギ(翻訳 野中進)出版社 東洋書店新社 出版年2020

ユダヤ人で、1930年代に日本にいた、これがソ連時代を生きるときどれだけ大きなハンディとなったか、著者は淡々とありのままを日記のように書くことによって、それがどれだけ大変なことだったのか教えてくれる。本書の読みどころは、いくつかある。まず著者が少年時代に過ごした1930年代の日本での生活である。父親はタス通信社の社員、当時は外国人は隔離され、コロニーのようなところで生活させられていたことを初めて知ったが、ここでの生活ぶりやドイツ人やアメリカ人たちとの交流を、子どもならでの目線で捉えていることが、とても新鮮だった。帰国後父が逮捕されるまでの過程もリアルに描かれている。スターリンの粛清真っ盛り、敵国扱いされていた日本に滞在していただけでも逮捕されるのは当然ともいえる時代であった。父はそれでも査問を何度かくぐり抜けているのが興味深かった。ただかつての同僚に告発されそのまま逮捕、そして銃殺されることになる。私のホームページに取調べ記録を掲載しているが、サーカス芸人で日本人であることで、スパイと見なされ銃殺されたヤマサキキヨシのことを思い出す。逮捕されたあと母と二人で、母も逮捕されるかもしれないという恐怖の中で、生きていく姿にも胸がいたくなってくる。監視の目がはりめぐらせている中で、万が一母が逮捕されたときのことを考えて親友や妹が暮らすハリコフに著者を避難させる、その母親の胸のうちを思うと、なんと恐ろしい時代だと改めて思う。しかしその中で妹や親友が親身になって助けてくれる、酷いこんな時代をなんとか生き延びようとする庶民たちの生きざまには胸を打たれた。そして戦争。ここでも母と子はユダヤ人というハンディーを背負いながら、疎開先でなんとか生き延びていく。戦後雪解けによりやっと父の名誉回復をかちとるまでの過程も丁寧に描かれている。こうした中から見えてくるのは、帯にもあるようにリアルなソ連史である。それは著者がその時代を生き延びてきたかを書くことによって初めて見えてきたものである。ほんとうに過酷な時代をユダヤ人、そして父の粛清という負い目の中で生きて行く姿を忠実に描くなかで、そんな社会だからこそ、どこかで助け合っていこうとする庶民の姿が見えてくるのは感動的だった。戦後職に困っていた母親の就職を、父のことも承知の上で斡旋してくれる学校の校長、伯父の墓石を墓地に建立するとき、クレーン車をだしてくれた作業員の親切は、ソ連時代、こんな社会だからこそ助け合って生きていかなければならないという庶民たちの知恵なのかもしれない。
著者はあのバウハウス運動で主導的な働きをしていたモホリ=ナジの甥にあたる。技術者として生きてきたとのことだが、芸術に対しても深い関心をもっていたのだろう。だからこそ別荘にいく途中で同席した汽車の中で知り合ったシャニフスキイと意気投合し、その後も交流していたのであろう。ダニエル=シャニフスキイ事件で逮捕されたシャニフスキイとの交流もこの本の読みどころのひとつであった。
私もソ連時代に何度かモスクワを訪れ、ソ連市民の生活の一部を垣間見たつもりでいたが、それはほんとうにごく一部だったことがよくわかった。常に監視するものがいる中、ここでソ連時代に生きることになったユダヤ人がどんな生活を強いられていたのかを肉声で伝えようとした本書は、とても大切な資料となっている。歴史家はいろいろな事例をかき集めることはできるかもしれないが、庶民はその場その場を生き延びていくしかないのである。そんな生活の一齣一齣を丁寧にたどっていくなかで、リアルなソ連史が見えてきた。
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じいちゃんの出番

2020-08-25 11:02:45 | デラシネ日誌
久し振りに長浜公園までウォーキング。お孫ちゃんがおっぱいを戻してしまうようで、娘はナーバスになっている。しかもうんちも丸一日出てないらしい。心配でしかたないようだが、妻が大丈夫だよとアドバイス。母は偉大だということを今回は改めて認識。じいちゃんはまったく役に立たない。今日は少し抱っこの時間を長くする。だんだん昔のことを思い出す。
少しずつ石巻学発送の準備をする。
大野のNHK出演が決まったようだ。素晴らしい!今回のリーフレットは彼女の傑作作品である。出演が決まってよかった。
二週間検診に病院に行く前に、お孫ちゃん一日ぶりのうんち。
検診は順調に育っている、おっぱい戻してもいいからどんどん飲ませなさいとのことらしい。
夜書斎にいると、「おとうさん」と呼ぶ声。ごきぶりがでたという。唯一家人が私を頼るのはこのときである。新聞紙丸めて一発でしとめる。じいちゃん見事に出番を飾る。
就寝前に歯を磨いているときに、奥のブリッジを支えている歯がとれてしまう。先生に大事にしてくださいと言われたばかりなのに・・・・

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