
先日、古本屋の格安文庫本の中に「韓国の怪談」(KAWADE夢文庫)という本があったので買ってきました。表紙や挿絵こそB級読み捨て本らしい雰囲気の本ですが、読んでみると、大邱の・・・とか翰林大の・・・とか話がけっこう具体的だし、「韓国では・・・」等々の説明まで入っています。著者はと見ると「秋田大学助教授 島村恭則」という方。「韓国・翰林大学講師などを経て現職。東アジアの多文化主義民俗学の研究に取り組み、とくに、韓国の都市に伝わる語り、現代民話、都市伝説の現地調査、研究で知られる」という民俗学者だそうです。道理で・・・。(現在は関西学院大学教授。)
さて、本の内容は「零感な怪談マニアの備忘録」というサイトの記事でおおよそ知ることができます。
一見して、日本でも聞いたことがあるような話がたくさんあることがわかります。
昔ながらの怪談ではなくて、いわゆる都市伝説というジャンルのものです。(島村先生、この本の中の話はすべて自ら直接採集したものであると記しているのは、さすがフィールドワークを重視している学者の本領発揮ですね。)
日韓の共通点をあげると、たとえば学校の怪談はおなじみ。誰もいない音楽室からピアノの音が・・・とか、トイレで個室を順々にノックしていく音が近づいてきて、いよいよ自分がいる個室に・・・等々。
学校を舞台にした怪談といえば、韓国映画「女校怪談」シリーズがありましたね。第4作まで出てるのかな? 私ヌルボが観たのは最初(1998年)だけですが。
それからカンプルのホラー漫画「timing」も夜の高校が舞台でした。「ヤジャ(夜自)」、つまり韓国の高校でふつうにやってる夜間自習の教室で、という点が韓国らしいところですが・・・。
あ、この「timing」は日韓合作アニメを2012年公開に向けて目下製作中で、昨年早々と予告編はできてます。→コチラ。
さて、この「韓国の怪談」を読むまで知らなかったのが「赤いマスク(빨간 마스크)」。
「赤いマスク」の女が電柱や建物の陰に隠れていて、夕暮れどき学校帰りの子どもが通ると突然現れて、「私は美人?」と訊ねてくる。子どもが怖がって「び、美人です」と答えると、マスクを取って「これでもか?」と見せつけるその顔は、口が耳まで大きく裂けていて、恐怖のあまり逃げようとする子どもを追いかけてくる・・・。
・・・なーんだ、おなじみの口裂け女とほとんどおなじじゃないの、と思ってウィキの「口裂け女」を見ると、ちょっとだけですが書いてあるではないですか。
一方、韓国ウィキの「빨간 마스크」を見ると、最初から日本の口裂け女(입 찢어진 여자)のことから書かれてます。
「韓国の怪談」にもちゃんと説明がありました。1979年に日本中の小学生たちをパニック状態にした口裂け女の話が韓国で赤いマスクの女として広まったのは10年あまり後の90年代初め。島村先生によれば、韓国で1989年に、それまで制限されていた一般国民の海外旅行が自由化され、日本の大衆文化が大量に流入しますが、この話もそうしたものの1つだったのでは、ということです。なぜ赤いマスクかというと、血の色の象徴、あるいは社会主義のイメージと関係があるのかもしれない、とコメントしています。
韓国サイトでこの「赤いマスク」関連のものを探していて見つけたのがDAUMの漫画サイト中にあったケーランケーランのネット漫画「学院奇異野談」。いろんな都市伝説(怪談)をネタにしている中に「赤いマスク」もありました。(→コチラ。)

【「学院奇異野談」より。赤いマスクの女が「私、キレイ?」と訊くところも日本と同じ。】

【同上。「はい」でも「いいえ」でも殺されるが、「まあまあです」とあいまいな返答をすると助かる、という点も日本と同じ。】
※韓国人研究者による関係論文「海を越えた日本の妖怪」→コチラ
→ ★韓国の怪談(都市伝説) その2★ タルギャル鬼神(玉子お化け)の2タイプ
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