ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国語] ディスハダは「ディスる」だが、チンハダは「チンする」ではない

2014-09-25 23:58:25 | 韓国語あれこれ
 今朝(9月25日)の「毎日新聞」に<国語世論調査:「名詞+する」定着 チンする、お茶する…>という見出しの記事がありました。
 文化庁が24日公表した2013年度「国語に関する世論調査」によると、「チンする」「お茶する」といった動詞表現が、日常語に定着していることがわかった、という内容です。今回は初めて調べたという「〜する」という形の10個の動詞の使われ方は下の表の通りです。


 私ヌルボの場合は「きょどる」「タクる」という言葉は知りませんでしたね。タクシーも挙動不審も日常生活ではほとんど縁がないし・・・。

 さて、これらを見て韓国語関連で考えたことをちょっと書いておきます。

以前、初めて「찡하다」という言葉を何かで見た時、「(レンジで)チンする」という意味かと思ってしまいました。
 「朝鮮語辞典」を引くと「(強い感動を受けて)じいんとなる」となっていて、日本語の「じいん」が韓国では「チン」となることを知りました。
 辞書には「가슴이 찡하여 말이 안 나왔다.」(胸がじいんとして言葉が出てこなかった)という例文も載っています。
 ところが、その後この言葉をいろんなところでみましたが、この例文のように가슴이 찡(がじいん)よりも가 찡」(がじいん)の方が多いような気がするのです。
 で、今検索してみました。
 その結果は、「코가 찡」が約1,930,000件、「가슴이 찡」約1,660,000件で、ヌルボの実感通りの数字でした。 韓国の人たちはこの2つをどれほど意識して使い分けているのかまではわかりませんが・・・。
 たしかに、鼻がじいんとするのもわかりますね。ただ、日本語で「鼻をチンしなさい」と言えば子どもに鼻をかませる時の言葉ですが。あ、これは関係ないか。

 なお「レンジでチンする」は韓国語でどういうかといえば、
 전자렌지(레인지)에 돌리다.
 直訳すると「電子レンジに回す。」
 전자렌지에(로) 데우다.=「電子レンジに(で)温める」でもいいみたいですが、上の「回す」の方がずっと多く使われているようです。

「ディスる」は、英語のdisrespect(軽蔑する、馬鹿にする)がモトになった言葉とみられています。ネット用語といってよさそうです。
 韓国のネット社会でも4~5年前から(?)「디스」(ディス)という新語が使われています。言葉の出処も同じ。意味も「攻撃・非難」だからほぼ同じ。そしてこの動詞形が「디스하다」です。
 こういう(たぶん)出処を同じくする日韓のネット用語がどのような経緯で定着していったのか、日韓相互の関連性はどうなのか、興味深いところではあります。

ネット社会は新語に満ちあふれています。その中に、上記の10の言葉と同じような構造の「ふぁぼる」があります。
 特定のツイート等をお気に入りに追加する行為を意味する言葉で、英語でお気に入りを指すfavoriteの「favo」からできた言葉です。しかし、「ファボる」よりも、なぜかひらがなで「ふぁぼる」と書くのがふつうのようです。
 この言葉は、全国民レベルではどの程度知られているのでしょうね?
 なお、この言葉にそのままあてはまる韓国語はないようです。
 「お気に入り」は韓国語では「관심글」なので、説明するとすれば「관심글에 추가하는 것」となります。

「ふぁぼる」と音が似ているのが「ファビョる」。実はこの言葉にふれたいがために③を書いたようなものです。
 これは英語由来ではなく、韓国語の「화병(火病.ファビョン)」が語源です。これもネット用語ですが、とくにいわゆる嫌韓サイトでよく使われる言葉です。
 <Hatena Keyword>(→コチラ)には次のような説明が記されています。
 「ファビョる」とは - 火病る。 ネットスラングの一つ。 顔を真っ赤にして逆切れすること。
 議論の場で反論ができなくなったら理不尽なまでに怒ることや、些細なことで大げんかに発展すること。

 ・・・と、ここまではまあいいとしても、続けて[由来]として次のようなことが書かれています。
 1996年にアメリカの精神科協会において、「火病(Hwapyung)」が韓国人に特徴的な症状として紹介されたことが元となっている。(キーワード:火病を参照)
 このことから2ch上で韓国人が逆切れする様子が「ファビョる」と表現されるようになった。
 のちに韓国人でなくとも理解不能なまでに癇癪を起こすことなどをあらわすようになった。

 ・・・私ヌルボ、この説明文はかなり問題があると思うゾ。
 なお、この「火病」という言葉はウィキペディアの項目にもなっています。(→コチラ。)
 読んでみると、コチラにも次のような記述が・・・。
 朝鮮民族特有の精神疾患と指摘されている病気である。元来は環境要因による風土病と考えられている。韓国の会社員の35.2%が、好ましくない上司と後輩を見た時に、火病になるとされている。
 ・・・と、これまた根拠に乏しい差別的内容。
 この冒頭には「この記事には差別的または侮蔑的な記述・表現が含まれています」とただし書きが付いているのですけどね。「含まれています」という以上に含まれてるゾ。

 あ、だんだん話がずれていってるかな?


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4 コメント

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チンハダ、火病 (ソウル一市民)
2014-09-26 08:57:35
 前にも書きましたが、日本で出ている韓日辞典を使っていると、結構「?」と思う訳語・語義や例文があり(特に「志向」、「止揚」、「論難」、「興行」、「当為」など、漢字語をそのまま漢字表記していて、日本語の意味合いとはずれてしまっている場合)、そういうときは国立国語院の標準国語大辞典(http://stdweb2.korean.go.kr/main.jsp)を参照することにしています。
 もちろん日常的に使われている意味合いが、辞書の定義からはずれてしまっているケースもあるため、このサイトを見ても依然「?」の場合も結構ありますが。
 このサイトで「チンハダ」を検索してみると、胸と鼻(先)、両方の例文が出てきます。

 わざわざ書かれていないだけだと思いますが、「火病」は日本語のウィキペディアにも書いてあるように、発音は「ファッピョン」と、「病」の最初は濃音化しますよね。これでは使いにくいのか、日本のインターネットではすっかり「ファビョン」「ファビョる」が定着してしまったようですが。

 全く関係ありませんが、韓国のコーヒー・チェーン店「パリ・バゲット」が、日本人の間では「パリバケ」と省略されることが多いようです。目にしたり聞いたりするたびに、「バケ」じゃなく「バゲ」だろうと、心のなかで突っ込んでいます。

 反対に(?)、日本語でもそうですが、韓国語でも外来語の(特に語末の)濁音を嫌って(?)、清音にする場合が多いですね。例えばChineseを「チャイニース」、Timesを「タイムス」とするなど、映画の題名などを見ていると、むしろ日本語以上に韓国語では語末の濁音を嫌う傾向があるように思います(もっともこれらの英語の発音自体、濁音なのか清音なのか、かなり曖昧なようですが)。
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清音と濁音 (ヌルボ)
2014-09-26 16:54:27
国立国語院の標準国語大辞典は、左のブックマークに置いているにもかかわらず、めったに使っていことに気づきました。大抵はNAVER辞典か、文章ごとgoogle翻訳にかけたりしているもので・・・。

英語の語末の濁音が清音になる例は(日本の場合)数えきれないほどありますね。花屋さんの花キューピッ「ト」というのは元の英語を見ないで命名したのでしょうかねー?
逆に、ルースがルー「ズ」になるという例もありますが。
ベッドをベッ「ト」というのは主に年配者でしょうか?
表記で迷うのは人名のジェームズ。ジェームズ・ボンドはジェーム「ス」と発音している人の方が多い、ですか? ロイ・ジェーム「ス」(←古い!)やジェーム「ス」三木はどちらも清音です。
ウィリアムズも同様で、ウィキペディアを見るとテッド・ウィリアムズ、ロビン・ウィリアムズ等は濁音なのにアンディ・ウィリアム「ス」は清音になっています。
しかし、おおざっぱに見ると、それでも原語の発音に少しは近づいているような気もしています。考えてみれば、ヴァとかティとかドゥとかの発音は昔の日本語にはなかったわけだし・・・。

韓国語では、スペルを見てもわからない(火病のような)濃音化は難しいですね。
濃音のファッピョンをファビョンとしてしまうのとは逆に、プルゴギをプルコギと表記し発音する日本人が多いのはなぜなのか、これもわかりません。同じようなスペルのムルコギが濃音なのもやこしいところです。
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発音あれこれ (ソウル一市民)
2014-09-26 20:16:47
 http://ja.forvo.com/
 という愛用サイトで確認してみましたが、James Bondは濁っている人ばかりですね。RobinとAndyのWilliamsは濁っているのかいないのか、微妙です(むしろ濁っていないような気がします)。
 他にも村上春樹などがこだわって濁音表記をしているMiles Davis(マイルズ)とかBlues(ブルーズ)とかもありますね。
 日本語の表記の揺れも、多少は原語の揺れに影響を受けているのでしょうか? 「ベッド」同様、bagを「バック」という人もいますね。「ルーズ」は確かに例外的に濁音化しますね。
 
 韓国語の外国語発音表記はかつての日本語式発音を「純化」してより原語に近い発音を目指しているようですが、今も日本語式の発音が残っているものもありますね(「パーマ」や「ニュース」など)。街で見かける表記となるとそれこそバラバラですし(余り例が思いつきませんが、例えば「カーテン」など)、韓国語の教師でも結構間違えます。

 濃音は確かに難しいですね。ある程度は推測できますが、結局ひとつひとつ覚えるしかないのでしょうか。恥ずかしながら最近知ったのですが、寝床は「チャムッチャリ」、トンボは「チャムジャリ」と、発音で意味が違っているんですね。
 以前も話題になった(今では徐々に無視されつつある)長音も含めて、昔は今以上に微妙な発音の違いで同音異義語の区別がなされていたのかも知れません。
 「効果」のように「ヒョッカ」と発音する人が多いのに、正しくは「ヒョガ」だったりするものもあり、こうなるといちいち全ての発音を辞書で確認するしかありませんね。溜め息が出るばかりです。

 すみません、いつも細かいことで脱線しまして…。ベルギーがどうして韓国語では「ベルギエ」なのかなど、国名表記も面白いのですが、今回はやめておきます。
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語末のs (ソウル一市民)
2014-09-27 20:55:19
 英語のハングル表記(語末のsを含め)、ウィキペディアにこんなページがありました。語末のsは最後の方の参考部分に記されています。
 http://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%9C%84%ED%82%A4%EB%B0%B1%EA%B3%BC:%EC%99%B8%EB%9E%98%EC%96%B4_%ED%91%9C%EA%B8%B0%EB%B2%95/%EC%98%81%EC%96%B4
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