ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [5月16日(金)~5月18日(日)]

2014-05-20 22:31:22 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 昨日19日がアップリンク「南部軍」最終日。  「南営洞1985」は明日もありますが、連続して見られるので行ってきました。
 2作のどちらをとっても考えたこと、新しく得た知識等々たくさんあって、ここではとても書ききれず。
 考えたことの1つは「時の流れ」「時代の変化」といったこと。つまり、①出来事が起こった時代の、出来事それ自体の意味 ②作品が作られた時代での、作品の意味 ③現在の、その本来の出来事、そして作品についての見方。これらを文章化するのは厄介なので、やるとしてもずっと後。
 少しだけ私ヌルボ個人の体験を書くと、最初に韓国に行ったのがこの映画公開(1990年)の2年後の1992年夏。釜山の竜頭山公園で話しかけてきた韓国人といろいろ話をしていて(日本語で)、ヌルボが「実は私、去年北韓に行ってきたんですよ」と言ったら、彼は別に驚くでもなく「北韓でもふつうの人々が暮らしているということですよ」という言葉を返してきました。
 なぜか気になったその言葉の背景がわかってきたのはかなり後だったと思います。つまり、韓国では少し前までは「北韓で人々がふつうに暮らしている」ということには考えが及ばなかったということ。<パルゲンイ(アカ)>は人間ではないと教育され、そう思い込んでいたわけです。
 <シネマコリア>の「南部軍」の説明(→コチラ)に次のような記述があります。
 軍事政権時代は政府の肝いりで反共映画が作られる事が多かったが、この『南部軍 愛と幻想のパルチザン』は共産主義者を人間的に描いた作品として注目に値する。また、公開された年、韓国映画としては『将軍の息子』に続いて2番目のヒット作となった。
 今思えば、北朝鮮にも「ふつうの人々」はいるものの、彼らが営んでいる生活が韓国や日本の人々が考える「ふつう」とどれくらい重なるか否かをちゃんと見きわめることが不可欠で、安易な親近感もまた真実を見る目を曇らせてしまう、と言えるのですが。
 あと、単純な感想その1は、「僕らが苦労した分いい世の中になるよね?」という戦いの中で斃れた少年兵士の言葉の無残さ。(下に貼った予告編にもあります。) ヌルボも含めて、その後の世の中を知る者にとってはつらい。(金日成の独裁体制は、そんな人々の理想を踏みにじった。李承晩やアメリカの肩を持つ気は毛頭ないが・・・。)
 単純な感想その2は、出演した俳優たちのその後の20余年もいろいろだなー、ということ。とくにチェ・ジンシル。あ、詩を読むインテリ青年を演じていたのが1995年ドラマ「砂時計」で主役の1人のヤクザ役で注目されたを演じていたチェ・ミンスだったことは後でパンフを見て知りました。雰囲気が全然違うもので・・・。「南部軍」でも青龍賞の男優助演賞と人気スター賞を受賞したとのことですが・・・。あ、チェ・ジンシルは同賞の新人女優賞ね。
 「南営洞1985」はタイトル通り1985年の出来事。しかしこの映画の持つ意味、とくに政治的意味は、まさに現在歴然としたものがあります。つまり反朴正煕・反全斗煥、ということは反保守政権(反朴槿恵)。80年代の民主化運動の担い手たちのその後の歩みも人それぞれですが、この映画にあるような拷問を受けた人たちにとっては「リクツ抜き」の思いがあって当然、なんでしょうね。
 ※濡れタオルで顔を覆い、その上から水をかける拷問を映画で観たのはケン・ローチ監督の「ルート・アイリッシュ」が最初。「ゼロ・ダーク・サーティ」にもあったかな? この映画でも出てきたので「そんな昔から?」と思いましたが、ウォーターボーディング(→ウィキペディア)の一種のようです。(拷問も歴史的に進化してきた、ということか・・・。)

 5月16日の「朝鮮日報」掲載の「封切映画 ぴったり10字評」です。

        
  [左] 「トランセンデンス」ジョニー・デップが出ても・・・。★★☆ 「人間中毒」「ラスト、コーション2」か?★★☆ 「GODZILLA ゴジラ」正直ゴジラがカワイイ❤ ★★★ 
  [右] 「新村ゾンビ漫画」3本中1本観れば十分。★★★ 「バックコーラスの歌姫〈ディーバ〉たち」スターより歌は二十倍。★★★☆ 「ジンジャーの朝」悩み揺れてこそ少女だ。★★★
 ※3作から成るオムニバス映画「新村ゾンビ漫画」については→コチラ
http://www.seoulnavi.com/special/5001567
参照。

     『南部軍 愛と幻想のパルチザン』の予告編です。
   

           ★★★ Daumの人気順位(5月20日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①10分(韓国)  9.4(63)
②ミスター・ピーボディ&シャーマン  9.0(72)
③あなたを抱きしめる日まで  9.0(56)
④ハン・ゴンジュ(韓国)  9.0(255)
⑤怪しい彼女(韓国)  9.0(2848)
⑥ダラス・バイヤーズクラブ  8.8(144)
⑦舟を編む(日本)  8.8(54)
⑧デタッチメント  8.6(72)
⑨お弁当箱  8.6(40)
⑩パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト  8.5(43)

 今回は「弁護人」をはじめこれまで長くランクに入っていた作品が一度に消えたため、大きく様変わりしました。しかし、代わりに浮上してランクインした作品中、初登場のものはゼロです。
※インド映画「お弁当箱」は4月15日の記事で紹介しました。

     【専門家による順位】

①インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌  8.8(7)
②罪の手ざわり(中国・日本)  8.1(8)
③グランド・ブダペスト・ホテル  7.8(7)
④萬神(韓国)  7.7(4)
⑤物語る私たち  7.4(5)
⑥キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー  7.3(6)
⑥ハン・ゴンジュ(韓国)  7.3(6)
⑧ノア  7.0(7)
⑨ダラス・バイヤーズクラブ  7.0(5)
⑩ブランカニエベス  7.0(3)

 コチラも前回と顔ぶれがかなり変わりましたが、新登場は⑩「ブランカニエベス」だけです。日本では2013年12月公開のスペイン&フランス映画で、私ヌルボも観ました。女闘牛士の物語として脚色した現代版白雪姫で、とてもおもしろかったです。韓国題は「백설공주의 마지막 키스(白雪姫の最後のキス)」です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[5月16日(金)~18日(日)] ★★★

         ソン・スンホン主演の19禁映画!「人間中毒」がトップ

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・人間中毒(韓国)・・・・・・・・・・・・・5/14・・・・・・・・・・・・445,482・・・・・・・・・646,875 ・・・・・・・・5,205・・・・・・・・682
2(新)・・GODZILLA ゴジラ ・・・・・・・・・・・5/15・・・・・・・・・・・・438,487・・・・・・・・・527,870 ・・・・・・・・4,471・・・・・・・・610
3(新)・・トランセンデンス・・・・・・・・・・・・・5/14・・・・・・・・・・・・317,046・・・・・・・・・420,278 ・・・・・・・・3,337・・・・・・・・417
4(2)・・標的(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/30 ・・・・・・・・・・・284,801 ・・・・・・・2,555,406 ・・・・・・・20,087・・・・・・・・434
5(1)・・逆鱗(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/30 ・・・・・・・・・・・211,970 ・・・・・・・3,648,369 ・・・・・・・28,403・・・・・・・・487
6(3)・・アメイジング・スパイダーマン2・・4/23 ・・・・・・・・・・・104,398 ・・・・・・・4,133,152 ・・・・・・・34,596・・・・・・・・331
7(4)・・リオ2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/01・・・・・・・・・・・・・52,036・・・・・・・・・714,432 ・・・・・・・・5,311・・・・・・・・272
8(6)・・ミスター・ピーボディ&シャーマン・・4/24・・・・・・・・・・・・15,417・・・・・・・・・372,785 ・・・・・・・・2,768・・・・・・・・107
9(5)・・ラスト・ベガス・・・・・・・・・・・・・・・・・5/08・・・・・・・・・・・・・14,380・・・・・・・・・164,315 ・・・・・・・・1,266・・・・・・・・129
10(7)・・グランド・ブダペスト・ホテル・・・3/20 ・・・・・・・・・・・・・・5,888 ・・・・・・・・・758,010 ・・・・・・・・5,887・・・・・・・・・34

       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「逆鱗」はどうも400万人に届くかどうかというレベルの中の下ヒットで終わりそうですね。「標的」にも抜かれちゃったし・・・。代わっての1位がやはり韓国映画の「人間中毒」という点が韓国映画界にとっては慰めになる、かな?
今回の新登場は1~3位の3作です。
 1位「人間中毒」は、ソン・スンホン主演の衝撃の(!?)19禁映画です。ベトナム戦争終盤の1969年。戦争での過酷な経験から精神的な傷を負った上、夫の出世に目がくらんだ妻(チョ・ヨジョン)や自分の顔色ばかりをうかがう部下に囲まれて退屈な日々を送っていたエリート軍人のキム・ジンピョン(ソン・スンホン)。ある日忠実な部下のキョン・ウジン(オン・ジョンワン)が軍官舎に引っ越してきた際、その妻チョン・ガフン(イム・ジヨン)を初めて見て強烈なときめきを感じ・・・。ということで、以下は「部下の妻と愛に落ちた」というキャッチコピーに沿った展開に・・・。原題は「인간중독」です。
 2位「GODZILLA ゴジラ」は7月25日の日本公開より2ヵ月以上早く公開。日本でもすでに公式サイト(→コチラ)もすでに用意されているので内容説明等は省略します。あるブログ記事(→コチラ)によると、米国向けのオリジナル予告編(→コチラ)には原発事故のシーンがあるのにもかかわらず、日本向けの予告編(→コチラ)ではカットされている、とあり、「オリジナルでは、主蒸気管破断で蒸気が大噴出したと思われるシーン、作業員が閉じ込められる場面、原発が崩壊する様子などが含まれていますが、これらがすべて削除されています」とのことですが、「あちこちから日本での宣伝活動に圧力がかかっているようです」と記されているのははたしてどれほど当たっているのかどうか? なお、この映画についての韓国ネチズンの評価は「DAUM映画」を見ると平均評点5.6。熱血会員と専門家の方はともに6.3でふつうの逆。全コメント(355件)中約20件に「日本」の語が含まれていますが、そのほとんどは3.0以下。日本の軍国主義を読み取ろうとしたり「日本美化が鼻につく」等、思い込みにとらわれているものが大半。全体でみると1割以下ですけどね。
 3位「トランセンデンス」は、主演ジョニー・デップの他レベッカ・ホール、モーガン・フリーマン等が出演するSF大作。これも6月28日日本公開で諸情報がすでに出てきているので詳細説明は省略。死ぬはずだった男の頭脳を妻が人工知能にアップロードして、死ぬはずだった彼の意識はコンピューターの中で生き続けて・・・という設定は10年ほど前(?)イーガンのSF小説で読んだ時には深く考えさせられましたが、今はもうふつうになってるのかな? そのうち人間の(たとえば自分の)コピーを話題の3Dプリンターの進化型(分子を積層造形法で重ねていく)で造れるようになるかもね。韓国題は「트랜센던스」です。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・ル・ウィークエンド・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/01・・・・・・・・・・・・・・4,087・・・・・・・・・・・・・・26,838・・・・・・・・・214・・・・・・・・・29
2(2)・・デタッチメント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/08・・・・・・・・・・・・・・2,110・・・・・・・・・・・・・・10,032・・・・・・・・・・76・・・・・・・・・25
3(新)・・007は殺しの番号・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,469・・・・・・・・・・・・・・・6,563・・・・・・・・・・13・・・・・・・・・・1
4(新)・・ジンジャーの朝・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/15・・・・・・・・・・・・・・・990・・・・・・・・・・・・・・・2,162・・・・・・・・・・15・・・・・・・・・17
       さよなら、わたしが愛した世界
5(5)・・はちみつ色のユン(ベルギー・仏・スイス・韓)・・5/08・・・・・・・・727・・・・・・・・・・・・・・・3,765・・・・・・・・・・28・・・・・・・・・21

 新登場は3・4位の2作品です。
 3位「007は殺しの番号」は、先週の3位「007/危機一発」(後「007/ロシアより愛をこめて」と改題)に先立つシリーズ第1作。その後「007 ドクター・ノオ」と原題(「Dr. No」)に沿って改題。イアン・フレミングの小説では順序が逆とはややこしい。韓国題が「007 살인번호(007 殺人番号)」というのは日本題からとった、かな?
 4位「ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界」は、英・デンマーク・カナダ・クロアチア合作。冷戦時代のロンドンを舞台に、思春期を迎えて感情のもつれや思想の対立により変化していく幼なじみの少女の関係性の変化を映し出す・・・という作品で、日本では昨年8月31日イメージ・フォーラムで公開。あ、今も飯田橋ギンレイホールでやってますね。(5月23日まで。) 韓国題は「진저 앤 로사」です。

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