ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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定年前退職S氏のソウル・慶熙大学校10週間留学記 (6)

2015-07-23 10:03:13 | S氏の慶熙大学校10週間留学記
◎4月25日(土)
 今日はトウミと会う日だ。当初は風呂屋でも行ってのんびりする予定だったが、先日の晩に急遽試験勉強の手伝いをしてくれるよう要請しておいた。こちらに来て一度も浴槽に浸かっていないのでそれも悪くはないのだが。
 朝は8時に起床。天気はすこぶる良いが、こちらへ来てこんなに寝たのは初めてだった。
 10時に寄宿舎の下で待ち合わせ。教科書を詰め込んだリュックを持って喫茶店に向かう。面接試験の内容を想定し質問と答えを考えてもらった。単語の書き取りをしたほか、短文を読み発音のチェックをした。単語は50個以上を書き取ったが、正答は半分程度しかなく発音はめちゃくちゃ。何度も読み返しを命じられる。2時間半ほど勉強したが、思いがけずウイスキーの差し入れを受ける。このウイスキーは軍人専用に売られるもので、箱には軍人用との記載がされている。なかなか貴重なものだ。しかも軍人は免税で買えるため市価の半額程度らしい。ただし、年間に4本ぐらいしか買えないとのこと。そのほかにも映画が半額で見られたり、いろいろなものが40%割引で買える特典があるという。そんなことで日本の映画もよく見るらしい。Sさんは見ましたかと訊かれたが、1本も見ていない。自分が少々情けなく思えた。
 昼は学校のそばにある小さな食堂に入る。トウミが昔からよく知っているらしい。スンドゥブと豚肉炒めを食べた。肉は柔らかくとてもおいしい。途中トウミが自分の携帯を差し出し、「奥さんに電話してみたら」と言われる。通話料が高いからと断ると「かまわないから」という。久しぶりに妻の声を聞いた。「子供にも電話して」と言われたが、「今電話番号は分からない」と伝えた。「子供の電話知らないとはいけませんね」と言われてしまった。5月18日は大学の創立記念日で授業は休みになるが、この日は日本海側にある束草(ソクチョ)という町に連れて行ってくれるらしい。ただし、雨天の場合は途中の道に危ないところがあるので中止になるという。
 夜、今までに3回ほど行った店で夕食をとる。今日は客が少ない。アジュンマが「おいしいですか?」と話しかけてくれる。そのうちご主人も出前から帰ってきていろいろと話してくれた。最初はあまり愛想がないと思っていたが、今日は饒舌だ。写真を見ながら息子の話、孫の話、北朝鮮の話、どうも安部首相は気に入らないらしいが、われわれは仲良くしなければならないようなことも言っていた。2年前日本に旅行に来たことも話していたが、日本の街路はとてもきれいだったと絶賛していた。

◎4月26日(日)
 今日は朝起きられない。かなり疲れているようで起床は9時半。朝、昨日買ってきたバナナを食べる。熟しておらず皮が上手く剥けない。やや硬めで甘みも少ない。バナナが多いのでいつものコンビニのアジュンマにおすそ分けした。それにしてもいつ行っても店にいる。朝早くから夜遅くまで、日曜から土曜日まで。一体いつ休むのか、他人事ながら気にかかる。
 今日も晴天、天気予報では25度まで気温が上がるらしい。とりあえず遅めの朝食のあと部屋の掃除をする。チリトリは1階まで行けばあるが面倒くさいので新聞紙をチリトリ代わりに使う。実は昨日から急にWI-FIが使えなくなった。困ったので管理人のお兄さんに見てもらったが端末に問題がある、とのことだった。程なくして復旧したのでホッと安堵する。
 昼食を食べた後トラブルが発生した。歯間ブラシを使っていたらかぶせ物がポロリと取れてしまった。奥歯にあるけっこう大きなかぶせ物なので、歯医者に行かなければどうにもならない。N先生に教えてもらったとおり日本の保険会社にTマネーカードでコレクトコールを試みる。上手くつながった。保険が利くことを確認できた。説明書をメールで送ってもらうため自分のアドレスを伝えている途中で電話が切れてしまったが、妻に連絡し日本からアドレスを伝えてもらった。夕方担任の先生に、明日歯医者に行きたいので歯医者を紹介して、とメールを送信した。

◎4月27日(月)
 なんと今日は久しぶりにクラス全員がそろう。まだ3回目だ。
 さっそく先生に歯医者を紹介してもらって授業終了後1時20分ごろに歯科医に行った。2時まで昼休み時間だった。回基(フェギ)駅そばの3階にあり、中は広くてとてもきれい。受付の人が待っていてというので待っていると、1時40分ごろ先生が戻ってきて5分後には診療開始。日本では考えられない。取れたものをスタッフに渡したが、事情を説明するとすぐに取り付けてくれた。虫歯があるので日本で治療を受けるよう促される。治療費は1万5千200ウォン。保険なしの初診でこの料金は信じられない。スタッフも4、5人はいる。カードで支払った。スタッフの対応もすこぶる良。このまま治療継続してもいいくらい。保険会社に請求するのもはばかられる金額。ところで、こちらはカード支払い時のサインがいい加減だ。文字は書かず一本線を適当にクニャッと曲げただけでOK.。どこでも皆やっている。まねしてやってみたらお咎めなし。サインの意味があるのだろうか。
 昼食は治療直後で硬いものは食べられない。冷蔵庫には買い置きした豆腐がある。部屋に戻り豆腐とヌルボさんにもらった甘食のようなお菓子、それとトウミからもらった乾パンで凌ぐことにした。乾パンといってもサクサクと柔らかい。豆腐も調味料がないので買い置きのインスタントラーメンの粉末調味料を取り出し、少し振りかけ食べた。せこいが1食分浮いた。
 そういえば昨日カンさんのお店で知り合ったzさんが火曜日にソウルに遊びに来るというメールが入った。まだ30代前半の男性だがきわめて酒好きで、ソウル大好き人間。着いてからすぐにも飲みたそうだが、こちらも一応試験がある。木曜日の晩に落ち合うことにした。それにしてもヌルボさんが来てから快晴続き。昼間は半袖で過ごせるようになった。疲労感もだいぶなくなった気がする。

◎4月28日(火)
 明日から中間試験。書き取りの授業があったが、旅行に行ったと仮定してどこでいつ何をしたかを書くことが課題。授業中40分近くひたすら書く。先生のチェックを受けるが相変わらず誤字が多い。先生は私の年を考えてか、「まあいいじゃない」くらいのことを言ってくれる。他の皆は上のコースを目指しているので必死。試験前でやや不安なまなざしが目立つ。
 午後はタンソの授業。試験前なので出席者は普段の半分の6人しかいない。先生は私ともう1人のタイ人女性にとくに熱心に指導してくれる。この女性は朗らかで、屈託なくよく笑う。男の先生は私より2、3歳上だがチングとまで言ってくれる。
 今までで親しみを感じるのは、中級クラスの中で意外にも中国人の2人の女性。なぜかよく顔を合わせるし、通学途中でもよく出くわす。いつもにこやかに話しかけてくれる。いつも笑顔でさわやかだ。最初のころアジョシと言われ、「オッパと呼べ」と言ったが、オッパとは言ってくれない。さすがに抵抗があるらしい。無理強いして嫌われるのもいけない。今日のタンソの帰りには試験の出題傾向まで教えてくれる。うれしい気分で寄宿舎に戻った。
 夜、受験勉強をしているとカンさんからカトク(カカオトーク)通話が入る。出ると、カンさんのお客さんが出る。このお客さんは半年ほど前にカンさんと飲みに行ったりしてその後もメールのやり取りはたまにしている。2、3日前に連絡があり、「韓国に遊びに行くので飲みましょう」と連絡が入っていた。けっこう今日もできあがっているらしい。こちらが試験前だと知っていながら、わざとらしく「今から飲みましょう」と半分冷やかし気分。やんわりとかわす。飲みに行くのは試験終了後の木曜日と再確認しておいた。受験勉強は進まない。しょうがない、消灯。

◎4月29日(水)
 久しぶりの雨模様。
 今日は中間試験の初日。文法、読み、筆記、聞き取り。試験を受けるのは何年ぶりだろう。ちょっと緊張感が走る。9時開始で1時まで。1科目終了ごとに10分あるいは20分の休憩がある。試験問題の内容は難しくないが、設問を理解するのに時間がかかる。問題を読んで頭の中で整理するのにやはり若い人の倍はかかるようだ。何度も読み返さなければならない。問題用紙の半分も終わっていないのに他の連中がはや次のページをめくっている音がする。途中時間経過を見るとどうしてもこのままのペースでは終わり切れない。筆記、読みのテストでは案の定時間不足。最後まで到達できなかった。読みの試験では例のマレーシアの秀才君がさっさと終了し時間前に退出した。休憩時間に早かったね、といったら、「簡単じゃん、みんな教科書に出てたじゃん」とのたまう。
 寄宿舎へ帰り、気になるところを教科書を開いて確認する。大きなところで致命的なミスをおかしてことが判明し絶句。結果はあまり期待できそうにない。いずれにせよ、これだけ集中したことは記憶を呼び起こしてもしばらくない。まあいい経験といったところか。
 昼食を食べようと店を探していたらクラスメートに会う。台湾から来た小柄でかわいい顔をしたお兄ちゃんだ。よくガールフレンドと手をつないで歩いている。PCパンが好きで授業に出てこないときがあり遅刻も多い。かったるそうに授業を受けているが授業内は理解しているようだ。趣味は靴集めらしい。毎日違うスニーカーを履いてくる。一体何足持っているのか。中華料理店のおいしいメニューを教えてもらう。
 明日は会話の試験日。

 [ヌルボより] やはり、若い学友たちとか、一緒に飲みに行くオジサン仲間とか、ちょくちょく行く店のオバサンとか、こうしたコミュニケーションがあるのは留学生活の大きな利点でしょうね。まあそれも当人の意志あるいは人柄といったものによるのでしょうが・・・。歯医者さん関係のことはまさに生きた韓国語学習かも・・・。
 それにしてもウイスキーを差し入れてくれるとは、なんと気の利いたトウミなんだ!

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