ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[8月30日(金)~9月1日(日)]

2013-09-03 23:50:17 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 「言の葉の庭」を最終日(8月30日)観に行ったら約10分前で残席は最前列に4つだけ。かろうじてセーフ。そして昨日はやっと「風立ちぬ」を鑑賞。
 <ぴあ映画生活>の平均評点は前者が80点で後者が70点。実際に両方観てみて、私ヌルボ、その数字に納得しました。で、軍配を上げるとすると、迷うことなく「風立ちぬ」です。
 「言の葉の庭」の平均評点が高いのは、極端に低い点をつけている人はいないから。その美しい映像だけでも観客を魅了するだけのものはあります。物語も、映像同様繊細な、小説を思わせるような展開で、8月14日から公開されている韓国での評価・感想もそんな魅力を感じ取ったものが多く、平均7.4とかなりの高評価を得ています。
 一方「風立ちぬ」のレビューをみると「退屈」「盛り上がりに欠ける」「何を伝えたかったのか?」「むずかしい」等々否定批判非難の言葉がどっさり。評点も10点以下が目につきます。それでも平均が70点もあるということは、しっかり高得点をつけている人も相当に多いということ。
 この映画は、自分の映画を見て宮崎監督がはじめて涙ぐんだ作品とのことですが、その気持ちはわかるような気がします。「文藝春秋9月号」の「新刊を読む」欄で関川夏央が「半藤一利と宮崎駿の腰抜け愛国談義」の書評を書いていますが、それによると宮崎駿の実家は航空機部品の製造工場で、戦争末期に栃木県鹿沼に疎開して零戦の風防をつくりつづけたとか。また宮崎の父も学生結婚した初婚の相手をわずか1年で結核で失ったそうです。関川は「そんな、自分の父親や堀越二郎が生きた時代の横顔を、長い道のりの末にようやくえがき得たという思いが、監督をして自作に涙させたのではないかと私は思う」と記しています。ヌルボも全く同感です。(「言の葉の庭」と「風立ちぬ」との「深さ」の差は、新海誠監督(1973年生まれ)と宮崎監督の年輪の差の表れでもあり、また歴史的・社会的視野の有無も大きな要素ですね。
 またこの「風立ちぬ」は、観る人の教養・知識といったものが問われる映画です。あのモネの「日傘をさす女」を想起させるポスターからしてそう言えますね。関東大震災とその後の時代背景、堀辰雄の小説はもちろん、トーマス・マン「魔の山」の主人公と同名の登場人物カストルプと、彼が歌っていた映画「会議は踊る」の主題歌、ゾルゲ事件との連関。シューベルト「冬の旅」の中の「溢れる涙」等々。いろんな細かなネタにこの作品解読の手がかりがあるようです。私ヌルボ、ホテルの暗い廊下の場面で渡邊白泉の「戦争が廊下の奥に立つてゐた」を思い起こしました。勝手な「理解」ですけど・・・。この映画についてはいろんなブログ等で書かれています。とくに印象に残ったもの、理解に役立ったものは→その1
その2その3その4などです。
 また、この作品に対して「零戦讃美」「戦争称揚」等々批判する声もありますが、それらは現代のモノサシで過去を測っているように思えます。戦争をもたらした歴史状況も、さまざまな形で戦争に関わった(関わらざるを得なかった)人々の生き方・考え方もそう一筋縄で解釈・評価できるものではありません。
 韓国では、「右翼映画」との批判が出てこの映画の公開が危ぶまれていましたが(→コチラ参照)、
結局9月5日から「切ない恋愛映画」として(!)公開されることになりました。(→コチラ参照。)
 はたして、韓国での反響はどうでしょうか? とまどいと反撥が多いような気がしますが・・・。

           ★★★ Daumの人気順位(9月3日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①描きたいこと(韓国)  9.9(29)
②DRAGON BALL Z 神と神(日本)  9.4(32)
③道の上で(韓国)  9.2(61)
④ザ・クルーズ  9.2(317)
⑤ターボ  9.0(206)
⑥グラン・ブルー  8.9(107)
⑦ドラゴン怒りの鉄拳  8.9(32)
⑧カミーユ、ふたたび  8.9(34)
⑨名探偵コナン 水平線上の陰謀(日本)  8.8(118)
⑩イン・ザ・ハウス  8.7(32)

 今回は新登場は②と⑦の2作品。
 ①「DRAGON BALL Z 神と神」は今年3月日本公開。韓国ファンの評価も高いです。韓国題は「드래곤볼Z : 신들의 전쟁」。
 ⑦はもちろんあのブルース・リーの映画。韓国では李小龍(이소룡)で通ってます。(ちなみにジャッキー・チェンは成龍(성룡)。) 1972年のこの映画、40年以上経った今、韓国でも名作として記憶に残っています。韓国題は「정무문(精武門)」です。

【専門家による順位】

①ザ・マスター  9.0(5)
②悲しみのミルク  8.0(2)
③ビフォア・ミッドナイト  7.7(4)
④雪国列車(韓国・米・仏)  7.6(6)
⑤ザ・クルーズ  7.3(3)
⑥グランド・マスター  7.2(4)
⑦25年目の弦楽四重奏  7.2(4)
⑧フォックスファイア  7.0(4)
⑨プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命  7.0(3)
⑩イン・ザ・ハウス  7.0(1)

 順位・評点とも前回と全く同じです。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[8月30日(金)~9月1日(日)] ★★★

         「雪国列車」は900万人、「かくれんぼ」は400万人を突破。

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・グランド・イリュージョン・・・・・・・・8/22・・・・・・・・・・・・・・626,866・・・・・・・・2,156,323・・・・・・・15,174・・・・・・・・586
2(新)・・エリジウム ・・・・・・・・・・・・・・・・・8/29・・・・・・・・・・・・・・573,370・・・・・・・・・・707,956・・・・・・・・5,356・・・・・・・588
3(1)・・かくれんぼ(韓国)・・・・・・・・・・・・・8/14・・・・・・・・・・・・・・563,244・・・・・・・・5,097,933・・・・・・・36,005・・・・・・・・648
4(3)・・風邪(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/14 ・・・・・・・・・・・・・158,384・・・・・・・・3,021,598・・・・・・・21,124・・・・・・・・329
5(4)・・雪国列車(韓国・米・仏)・・・・・・・・8/01・・・・・・・・・・・・・・158,185 ・・・・・・・9,118,343・・・・・・・65,343・・・・・・・・315
6(新)・・スティーブ・ジョブズ ・・・・・・・・・・8/29・・・・・・・・・・・・・・123,943 ・・・・・・・・・159,773・・・・・・・・1,139 ・・・・・・・402
7(新)・・怪盗グルーのミニオン危機一発・・9/12 ・・・・・・・・・・・・80,292・・・・・・・・・・・80,292・・・・・・・・・・530 ・・・・・・・297
8(5)・・ザ・テロ・ライブ(韓国)・・・・・・・・・・7/31 ・・・・・・・・・・・・・・・58,107・・・・・・・・5,543,675・・・・・・・39,588 ・・・・・・・186
9(新)・・DRAGON BALL Z 神と神(日本)・・8/29・・・・・・・・・・・・・28,727・・・・・・・・・・・34,252・・・・・・・・・・226 ・・・・・・・262
10(6)・・エピック ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/07・・・・・・・・・・・・・・・18,656・・・・・・・・・・972,873 ・・・・・・・・6,710 ・・・・・・・101
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「グランド・イリュージョン」が久々に韓国映画に代わって1位。「かくれんぼ」は500万人を突破。韓国映画のスリラー部門では「チェイサー」(2008年.507万人)の記録を上回って歴代2位に浮上とか。歴代1位は「殺人の追憶」(2003年.525万人)。これもたぶん抜きそうですね。「雪国列車」は900万人は超えたものの1000万人には届かない感じ。
 今回の新登場は2・6・7・9位の4作品です。
 2位「エリジウム」は長編デビュー作「第9地区」で注目されたブロムカンプ監督の新作SF、ということだけで私ヌルボとしては期待大。時代は近未来。富裕層と貧民層に二分された社会で、富裕層の住むスペースコロニーの名がエリジウムなんですね。物語は、地球の方に住む余命わずかの青年(マット・デイモン)が極端な格差に苦しむ民衆を救うためエリジウムへと向かう、というもので、対する富裕層側の敵役をジョディ・フォスターが演じます。韓国題は「엘리시움」と少し発音に違いが・・・。日本公開は9月20日です。
 6位「スティーブ・ジョブズ」は、もちろんあのアップル創業者。仲間たちとガレージで会社を立ち上げてから次々とヒット商品を生み出す一方で、誰彼かまわず悪態をついたり、その結果会社を追われてしまったり等々ハイライトシーン続出の半生の物語。韓国題は「잡스(ジャブス)」、日本公開は11月1日です。
 7位「怪盗グルーのミニオン危機一発」は「怪盗グルーの月泥棒3D」の続編。悪党稼業から足を洗うことを決意した元怪盗軍団のリーダーのグルーが、危機に陥った相棒の不思議な生き物ミニオンの救出作戦を敢行! 9月21日 原題が「DESPICABLE ME 2」で、韓国題が「슈퍼배드 2(スーパー・バッド2)」で、全然見当がつかんわ。
 9位「DRAGON BALL Z 神と神(日本)」については前述の通りです。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・グランド・マスター ・・・・・・・・・・・・・・・8/22・・・・・・・・・・・10,095・・・・・・・・・・・・・・・81,257 ・・・・・・・・・582・・・・・・・・・・54
2(3)・・25年目の弦楽四重奏 ・・・・・・・・・・・7/25 ・・・・・・・・・・・・3,260 ・・・・・・・・・・・・・・89,391 ・・・・・・・・・671・・・・・・・・・・21
3(2)・・言の葉の庭(日本)・・・・・・・・・・・・・・・8/14・・・・・・・・・・・・2,571・・・・・・・・・・・・・・・46,171 ・・・・・・・・・345・・・・・・・・・・32
4(4)・・エンド・オブ・ザ・ワールド ・・・・・・・・・8/14・・・・・・・・・・・・1,574 ・・・・・・・・・・・・・・16,887 ・・・・・・・・・125・・・・・・・・・・19
5(新)・・ニューヨーク、恋人たちの2日間 ・・8/29・・・・・・・・・・・・1,341 ・・・・・・・・・・・・・・・2,330・・・・・・・・・・・17・・・・・・・・・・18

 今回の新登場は5位の「ニューヨーク、恋人たちの2日間」だけです。この作品は日本では7月に公開されました。韓国題は「2 데이즈 인 뉴욕」です。