ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [8]

2013-09-29 20:05:22 | 高校生にすすめる本360冊

 今回は、社会問題や戦争等をテーマにしたノンフィクションの後半の犯罪関係や、体験記、ルポ等々です。

☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
150松本清張日本の黒い霧文春文庫150=清張は推理小説ばかりではない。下山事件等、戦後まもない時期の権力による謀略事件の謎を執拗に追及する。
151=安易に死刑を肯定している人、その実態を知っていますか? 死刑執行人になれますか? 「死刑」(現代書館)や「死刑廃止を考える」(菊田幸一.岩波ブックレット)も参照のこと。
152~154=犯罪実録にもいろいろある。152は権力の犯罪ともいうべき冤罪(えんざい.=無実の罪)。岩波文庫にも野間宏「狭山事件」がある。153は4人射殺した上2昼夜人質をとって立て籠もった銀行強盗の人生の軌跡。154は言語を絶する猟奇的殺人鬼の記録。これを読んでも死刑反対を唱える私はヘンかも。
155=ニューヨークのスラム街ハーレムで暮らした女性カメラマンと黒人住民との交流、さまざまな問題提起。
156・157=異常な政治状況の中で人々は・・・・。156は「アンネの日記」(文春)と併せて読んで。自分が非ユダヤの一市民だったらということも考えよう。157は60年代中国の文化大革命の渦中にあった十代の少年が、今ね当時の略奪・私刑・下放等の体験を鮮烈に、痛切に綴る。映画「芙蓉鎮」もぜひ観て! 文革関係では鄭念「上海の長い夜」(文春)も文庫化した。
158~160=<知られざる国>北朝鮮の驚くべき実態。158は拉致された韓国の映画監督夫妻の体験記。159はあの飛行機爆破事件の犯人の告白。特異な体制下でのエリート一家の生活と、ドラマチックな事件の全貌。160は収容所からの決死の脱出行。
161=かつて社会主義は正義を求める人の希望でありねここに描かれた中国共産党の長征も<偉業>とされた。が、今や毛沢東も李志綏「毛沢東の私生活」(文春)で実像があらわに。
162=辛亥革命以前~現代、祖母から著者まで女性三代の実録でたどる中国現代史。<あの「大地」を超えた>との宣伝文句も決して大げさではない名著。とくに文化革命期は強烈。
163・164=優れたフィールド・ワーク。163を読むとわれわれ“文明人”の生活や思考様式即“マトモ”とは決していえない。164は消えゆく伝統社会の民俗と人情の貴重な記録。
165=動物や未開人との<自然な>ツキアイの記録。トラにも動じない著者に驚嘆。ウ○ムシまで食う話には思わずオエッ!
166=世界各地で<食>を手がかりに文化や社会の問題を考える。貧困地帯で残飯をあさったりするのがすごい。
167・168=インドは途方もない国だ。そこでは当たり前のことが、われわれの“常識”を揺さぶる。168の著者はカメラマン。
169=千人中の紅一点として北洋船団に乗り込んだ女性船医の奮闘記。好奇心旺盛な著者に感心。船や漁業の知識も増す。
170=マゼランは、フィリピンで<野蛮人>に殺されたという<通念>は捨てるべし。原地人の視点で捉え直した世界史の真実。
151大塚公子死刑執行人の苦悩角川文庫
×
152
佐木隆三ドキュメント狭山事件文春文庫
153毎日新聞社会部破滅
梅川昭美の三十年
幻冬舎文庫
154シェクターオリジナル・サイコ早川文庫

155
吉田ルイ子ハーレムの熱い日々講談社文庫
156ヒース思い出のアンネ・フランク文春文庫
157陳凱歌私の紅衛兵時代講談社現代新書
158崔銀姫
申相玉
闇からの谺(こだま)文春文庫
159金賢姫いま、女として文春文庫
160姜哲煥
安赫
北朝鮮脱出文春文庫
161スノー中国の赤い星ちくま学芸文庫

162
ユン・チアンワイルド・スワン文春文庫
163本多勝一ニューギニア高地人朝日文庫
164宮本常一忘れられた日本人岩波文庫
165西丸震也動物紳士録中公文庫
166辺見庸もの食う人々角川文庫
167堀田善衞インドで考えたこと岩波新書
168藤原信也印度放浪朝日文庫
169田村京子北洋船団女ドクター航海記集英社文庫

170
本多勝一マゼランが来た朝日文庫


 158~160で北朝鮮関係が3冊。それ以前から北朝鮮の実態はさまざまに伝えられているのに、今もなおその体制が存続しているのはなんということか!? 「民族的自尊心」の強い韓国の人たちは、そのことを「民族の恥」と考えないのでしょうか? 
 しかし、北朝鮮の支配者・指導層だけでなく、その人権抑圧に自覚もなく加担している人たちはたくさんいるゾ! (韓国・中国・アメリカ・ロシア、そして日本にも・・・。)

 この1世紀、いや半世紀の間でも、地球上に(「文明人」にとっての)未知の場所がほとんどなくなり、「未開」の地もどんどん変貌している今、ふつうの旅行記録だけでは読者を引きつける時代はとっくに過去のものになっています。
 風呂場だけで読み終えた山口誠「ニッポンの海外旅行 若者と観光メディアの50年史」(ちくま新書)によると、「地球の歩き方」も初期の貧乏旅行のバックパッカー向けから現代のグルメ、ショッピングの消費が主目的のスケルトンツアーといった旅行形態の大きな変化とともにどんどんコンセプトが組み直されてきました。(たしかに・・・。) それも思えばわずか最近の20~30年のことなんですね。
 今やルポを書くのも、どこに行って何を見たか以前に、どんな発想(問題意識、視点・・・)から書くかということが重要、というか、それしかないのかもしれません。・・・というようなことを野村進も「調べる技術・書く技術」(講談社現代新書)で強調していました。むべなるかな、です。

 おっと、まだ全360冊(+α)の半分まで達していないのか、ふう・・・。