ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [5]

2013-09-01 16:13:41 | 高校生にすすめる本360冊

 今回は、伝記・日本語&読書関係の教養書・古典です。
 キョーレツな個性の持ち主の伝記が多いと思われるかも・・・。しかし、伝記になるような人物はたいていそういう人ではないかなー。逆に、品行方正で良識をわきまえていて、人と争ったり人に迷惑をかけたりしない人物の伝記なんておもしろくなさそうではないですか。

☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
105杉森久英天才と狂人の間河出文庫105~112=伝記。105は今は忘れ去られた島田清次郎という<天才>小説家、106は大正期の婦人運動家で、大震災の直後夫のアナーキスト大杉栄とともに官憲に虐殺された伊藤野枝、107は歌人与謝野晶子の生涯。106と107の、強烈な個性と波瀾に満ちた生き方にはただただ唖然。カワユサばかり求め安定を望む現代ギャルがますますくだらなくみえてくる。女生徒諸君必読。108、純粋でひたむきな光太郎の愛がなぜ智恵子の心をむしばんだのか? 読みやすい本。109は近代日本経済の礎を築いた大人物渋沢栄一の伝記。読む側まで熱くなる。110は著者の母がモデル。本好きの主人公が読んだ本を通して、大正~敗戦の時代と、その中を生きた無名の知的な女性の人生を描く。111は、単なる美術史のわくを越えて、社会との関わりの中で女性のあり方を考える深い問題提起を含む。112は、学校ではあまり<評価>されなかったものの、自分のやりたいことを追求しつづけてミキサー、ナイフ職人、動物写真家、ソムリエ等のエキスパートになった人たちの青春時代。学校がすべてではない。
113=なぜ生命の危険を冒し、つらい思いをしてまで登山家たちは山に挑むのか? 栄光と悲劇は紙一重、という例は多い。
114・115=日本語と日本文化の奥深さを知るために。115はさまざまなことわざ、言葉遊び等とその背景。伝説・民話、そして雑学にも詳しくなれる。古人の知恵とユーモアには敬服。
116・117=教養とは単に物事を知っているだけのことではない。これらを読めばわかるはず。森本さんの本はどれも深い内容をとてもわかりやすい言葉で書いてくれている。
118~128=日本の古典。現代語でも難解な「源氏物語」や、おじみの「枕草子」だけが古典だと思い込むのは不幸というもの。以下の作品はどれも原文でそのまま読めるはず。118はバラエティに富む説話の数々。弟分の「宇治拾遺物語」(角川文庫)もよろしく。119は美文による絵画的描写がいい。120、時を越えて人情といったものが相通じる思いがする。たとえば鬼瓦を見て上京中の武士がなく。「国で待つ妻を思い出した」というわけだ(笑)。121は戦国時代の歌謡集。現代にも通じる感覚。声に出して読んでみて。-「世間(よのなか)は霰(あられ)よなう 笹の葉の上の さらさらさっと降るよなう」。122は「源氏物語」に先立つ作品で、レッキとした貴族文学だが、音楽を素材にした、スケールの大きい、SFの要素もある物語。原文が難しい古典は現代語訳でけっこう。それなら「徒然草」も全部読める。236段の狛犬の話など何度読んでもおかしい。123こそ高校生向きのテキスト。ぬゎんと、原文で読んで意味がすいすいわかる! おまけにおもしろい!! なぜ岩波は復刊しないんだ!? 私は探しに探して大阪の古本屋で大枚千二百円払って買ったんだぞっ! 124はこれこそグロの極致! 芝居よりも映画よりも怖い! 心底怖い!! 125はパロディ精神に溢れた江戸時代の庶民向け読み物である黄表紙の集成。金があり余って困る話の「莫切自根金生木」(きるなのねからかねのなるき=回文!)など本当に笑える。126も、読むとつい笑い声が出てしまう。電車内で読むときには気をつけよう。127は江戸時代人のユーモアと反骨精神に共感。
128=「うれひつゝ岡にのぼれば花いばら」-蕪村の句には現代人の感覚に通じるものがある。「北寿老仙をいたむ」等の詩も心をうつ。蕪村は絵もすばらしい。いつも溜め息が出る。

106
瀬戸内晴美美は乱調にあり角川文庫

107
田辺聖子千すじの黒髪文春文庫
108駒尺喜美高村光太郎のフェミニズム朝日文庫
109城山三郎雄気堂々新潮文庫
110林真理子本を読む女新潮文庫
×
111
若桑みどり女性画家列伝岩波新書
112立花隆青春漂流講談社文庫
113ウィンパーアルプス登攀記講談社学芸文庫

114
池田弥三郎日本故事物語河出文庫
115金田一春彦ことばの歳時記新潮文庫
×
116
准陰生読書こぼればなし岩波新書
117森本哲郎ことばへの旅角川文庫
118
今昔物語集角川文庫

119

平家物語角川文庫

120

能狂言岩波文庫

121

閑吟集岩波文庫

122

[現代語訳]宇津保物語講談社学術文庫

123
井原西鶴西鶴諸国咄岩波文庫

124
鶴屋南北東海道四谷怪談岩波文庫
125
江戸の戯作絵本教養文庫
126興津要(編)古典落語講談社文庫
127なだいなだ江戸狂歌岩波同時代ライブラリー
128芳賀徹與謝蕪村の小さな世界中公文庫


 父親の蔵書だった「日本故事物語」を読み耽ったのは高校生の時だったかな? 「いすかのはしの食い違い」「洞ヶ峠」等々の言葉を知ったり、「のどが鳴る早や死にかかる松右衛門(「のどかなる林にかかる松右衛門」のもじり)、「ながきよの とをのねぶりの みなめざめ なみのりぶねの をとのよきかな」(回文)のような言葉遊びのおもしろさに目覚めたりと、とくに印象に残っている本です。そういえば、「閑吟集」にある「むらあやでこもひよこたま」という歌も載っていたなー。(彼氏を待ち焦がれる女性の歌。逆に読む。)

 116の「一月一話 読書こぼればなし」の淮陰生が中野好夫であることは後に知りました。

 明治時代以降、近代化が進展するにつれて、それまで音読がふつうだった読書が黙読に変わっていったそうです。
 ここにあげた古典作品も、「声に出して読みたい」と言われなくても、声に出して読みたくなる本がそろっています。