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「靖国神社大学」(仮称)と憲法89条

2016-06-13 | ライシテと「国家神道」
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2016年 6月13日(月)09時38分41秒

>筆綾丸さん
>公の支配
佐藤幸治氏(京都大学名誉教授・学士院会員)は一昔前の代表的な憲法教科書である青林書院・現代法律学講座『憲法』において、「アメリカ的発想に基づくが、目的趣旨が必ずしもはっきりしないまま成立」とまで言っていますね。
(引用は「新版」(1990)、p166以下から)

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(ロ)公金支出の禁止 憲法は、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」(八九条)と定める。本条により、①宗教団体への公金支出・財産供用、および②「公の支配」に属しない慈善・教育・博愛事業への公金支出・財産供用、がそれぞれ禁止されることになる。①は政教分離に関するもので二〇条の信教の自由の箇所で述べることにして、ここでは②について若干論及することにする。
 およそ公金の使途は明確にしておかなければならないが、慈善・教育・博愛の事業の場合は美名の下にとかく包括的な支出が容認されがちであると同時に、他面、これらの事業に公権力が深く介入することはその自主性・独立性を害する結果になり好ましくない、という配慮が②の背景にあるものと推測される。既にマッカーサ草案(八三条)にあったことから知られるように、アメリカ的発想に基づくが、目的趣旨が必ずしもはっきりしないまま成立し、しかも文言上の混乱もあって(「公の支配」なら「服する」であるべく、「属する」ではありえない、「属する」なら「公の支配」でありえない、といわれる〔小嶋和司〕)、様々な論議を生むところとなった。【後略】
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マッカーサー草案以来の「公の支配」をめぐる混乱を、政府と憲法学界が一体となったご都合主義的解釈で弥縫した結果、現在では一般の私立大学と並んで、宗教団体を母体とする大学にも、毎年、数億・数十億という巨額の公的資金が流れ込んでいますね。
支給の対象は同志社・立教・上智のようなキリスト教系大学はもちろん、大谷・花園等の仏教系大学、そして国学院や皇学館のような神道系大学にも及んでいます。
だから、仮に宗教法人靖国神社が私立の「靖国神社大学」を設立したら、憲法上何の問題もなく、巨額の公的資金を供与できるんじゃないですかね。
靖国神社の国家護持となると憲法上の超弩級の重大問題となり、かつては凄まじい騒動が起きたものですが、そんな難路ではなく、多くの宗教団体がやっているように「靖国神社大学」(仮称)を設立すれば、憲法上ノープロブレムで一挙に人材育成と公的資金投入による財源確保ができそうですね。

「靖国神社法案」

>キラーカーンさん
>「影の本命」
9条のために憲法全体が「不磨の大典」になってしまっていますが、89条は直さないとみっともないですね。

※筆綾丸さんとキラーカーンさんの下記投稿へのレスです。

公の支配 2016/06/11(土) 11:40:57(筆綾丸さん)
小太郎さん
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%81%E5%AD%A6%E5%8A%A9%E6%88%90
「宗教関係学校法人」は国(県)の認可によるもので「公の支配」(憲法89条)に服するから、「巨額の助成」であろうとも合憲だ、ということのようですね。これに比べると、玉串料や地鎮祭など、馬鹿々々しいほどケチな問題だな、という気がしますね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95%E7%AC%AC89%E6%9D%A1
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%88
GHQ草案の「not under the control of the State」(現行憲法の英訳 not under the control of public authority )は、「コンコルダート」あたりに起源があるのかどうか・・・。

https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/
青井未帆氏『憲法と政治』は、少し読んでみましたが、著者の個性云々以前に、岩波書店らしい内容です。

「公の支配」等々 2016/06/11(土) 22:55:45(キラーカーンさん)
>>ドイツ出羽の守
ドイツに限らず、欧州各国には「キリスト教○○」という有力政党がありますから、
その意味で、日本の憲法学者が考えるような「政教分離」という議論には不適切なのでしょう

>>辻村みよ子女史
辻村女史はフランス憲法が専門ですから、フランス憲法とフランス革命を無意識のうちに「至高の物」としている可能性があります。

>>公の支配

個人的には、憲法改正での「影の本命」ではないかと思っています。
少なくとも、現状の運用について異論を唱えている勢力はないので
改憲のコンセンサスは取れるはず。
(朝鮮学校は、おそらく、現状ではいかなる意味でも「公の支配」には属しません。
 「専門学校」に該当するという可能性は残っていますが)

「影の対抗」は衆議院の「7条解散」の明文化です
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