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満州国通信社と電通

2014-11-24 | 将基面貴巳『言論抑圧-矢内原事件の構図』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年11月24日(月)21時45分24秒

>筆綾丸さん
佐野眞一氏は最初の思い込みを絶対に軌道修正せず、また直ぐに袋小路に入り込んで戻ってこない人ではないかと思いますが、『阿片王』はその意味での代表作でしょうね。
満州国通信社はもともと岩永裕吉のアイディアであり、その実現も結局のところ関東軍の権勢によるものであって、里見甫個人の貢献度は僅少ではないかと思います。
「広告専門となった電通には里見の息がかかった元国通の社員たちが戦後、大挙して入社し、今日の電通の隆盛を築く礎となった」との記述も、別に具体的な人名を挙げるでもなく、どのように「今日の電通の隆盛」に貢献したかも説明しないのは奇妙ですね。
私も電通の歴史について特に詳しい訳ではありませんが、財界人の伝記シリーズ等の通俗的な読み物を見る限り、戦後の電通の隆盛をもたらしたのは吉田秀雄という個性的な経営者だそうです。
「国通を立ちあげた里見は、現在の日本のメディア体制の基本的枠組みを満州でつくった」は、経営の実際を知らない佐野氏の妄想じゃないですかね。

吉田秀雄

>田中耕太郎
戦前、文部省と東京・京都帝国大学の間で起きたいくつかのトラブルの結果、慣習的に形成された「大学の自治」とは結局のところ「教授会の自治」ですが、田中耕太郎は経済学部教授会の自治を全面的に破壊した訳で、当然ながら評価は分かれますね。
私も昔は単純に、ファシズムに一矢報いた田中耕太郎は立派な人、みたいに思っていたのですが、平賀粛学の経緯を細かく見て行くと、いくつかの疑問も生じますね。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

里見甫 2014/11/23(日) 21:28:13
小太郎さん
http://www.shinchosha.co.jp/book/131638/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8C%E8%A6%8B%E7%94%AB
電報通信社のことは、おぼろげな記憶ですが、佐野眞一氏の『阿片王―満州の夜と霧―』に出てきましたね。

http://www.sankei.com/world/news/141122/wor1411220034-n1.html
はじめて知りましたが、フランシスコ・ザビエルの遺体が残っているのですね。

追記
『阿片王』には、昭和六年(1931)九月、満州事変が勃発すると、里見は関東軍第四課の嘱託辞令を受け、一国一通信社という国策のもと、聯合と電通の合併工作に専念し、二・二六事件が起きる一か月前、昭和十一年(1936)一月、電聯合併による同盟通信の発足となったとあり、次のような記述になります(同書112頁~)。
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戦後、同盟は共同通信と時事通信に分割された。一方、広告専門となった電通には里見の息がかかった元国通の社員たちが戦後、大挙して入社し、今日の電通の隆盛を築く礎となった。国通を立ちあげた里見は、現在の日本のメディア体制の基本的枠組みを満州でつくったともいえる。
「阿片王」といわれた里見の業績は、アヘン販売による独占的利益を関東軍や特務機関の機密費として上納する隠れたシステムをつくりあげた点に目が向けられがちである。だが、現在への影響力でいうなら、それよりもむしろ、今日の共同通信と電通を発足させる引き金となった国通設立に尽力したことがあげられる。
見逃してならないのは、ここにも、満州の地下茎が戦後日本に延び、その上に現在の日本の通信、広告の帰趨をなす陣容のプロトタイプが築かれたことが瞥見できることである。
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以上は、戦後の日本は満州国の射影である、という佐野氏の持論の一部になりますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%A0
なお、文中の「地下茎」はドゥルーズの言うリゾームを踏まえているのかもしれませんね。

『天皇と東大』の「第五十八章 軍艦総長・平賀譲の経済学部大粛清」をパラパラ眺めながら、連合艦隊旗艦の長門や大和などを考えると、「軍艦の神様」と言えども、経済学部の粛清より軍艦の設計のほうが難しかったのではあるまいか、と思われました。軍艦の設計図はおそらく数万枚に及ぶだろうが、優秀な参謀(田中耕太郎)が作成した粛学の設計図は数枚で済んだだろうから・・・。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E8%B3%80%E6%B0%8F
「軍艦の神様」は、信濃平賀氏ではなく安芸平賀氏の末裔でしょうか。
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1 コメント

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Unknown (Mr仏敵)
2021-01-22 08:35:34
「思考盗聴」「集団ストーカー」の原点を見ると、満州通信社と電通にぶつかることがあります。
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