前回の続きです。
亡命計画を相談し、二手に分かれての渡米を優作に聞かされ、抵抗しつつも、納得させられた聡子。
亡命資金を貴金属に変えるため、知り合いの帝大教授から借りたオープンカーで、森を抜け神戸市内に向かう二人。
昨日とは、打って変わってはしゃぐ聡子。優作は、それなりに聡子の気分の上げ方を知っている。
亡命計画は、もう実行に移されたことで、覚悟は決めて吹っ切れた聡子。
結婚記念日のプレゼントを装い、楽しそうに宝石を買い求め。
嬉しそうに外国製の時計を買い求め。
聡子の振る舞いは、装おうと言うよりも、誰から見ても、疑うこと無く記念品を買い求める、仲の良い夫婦。
別々のルートで、アメリカに渡り、サンフランシスコで落ち合い、ワシントンに向かう。機密情報を携えての危険な旅。しかし、聡子にとっては、二人で秘密を共有しての冒険旅行。
この日は、これで記念品の買い物は終了。
それで、買い物先が二軒共に、何故か露天商でした。高額な商品をこんな露天商で買い求めることは、当時、ふつうだったの?
優作は貿易会社の社長で、立派なお屋敷に住み、女中と執事のいる暮らしです。これまでにも、聡子にはいろいろな記念として、高額な貴金属のプレゼントをしていた筈で、行きつけの店があった筈。
これは、行きつけの店だと、記念日は覚えられていて、結婚記念を装おう事ができなかった?それとも当時すでに、贅沢品は一掃され、闇で買うしかなかった?
監督の黒沢清さん、説明不足です。それとも、そんなことぐらい、少し考えればわかるだろう!って事? そう言うことでしたら、言います。この作品、説明不足が多すぎるのです。
答えは提示せず、いろいろ解釈の余地を残すのが名作の条件だとしても、解釈の材料提供が少な過ぎます。まぁ、この話は、最後の、最後にとって置きます。
本日は、気分が、いまいちなので、もう一言、以前より、ずっと、ずっと、抱いていた、疑問点を、二言、三言。
この作品、8K高精細を売りの一つとしています。でも、しかし、高精細の映像と言えるのは、森の中を疾走するオープンカーの数十秒のシーンだけでした。
演出として、映像表現として、室内シーンのほとんどが、明るさ落としたり、逆光だったり、不鮮明なシーンばかりでした。こう言う作品であれば、4K、いや、1Kで十分だと思います。
8Kドラマとして、この作品を製作したのは何かの手違い?それとも、技術的に問題があった? 我が家のテレビは4K対応ですが、4K放送の屋内で撮影された画面は暗いのです。
相撲中継は、4Kと地上波の両方で放送されていますが、4K放送は画面が暗いのです。まあ、相撲中継は4Kのカメラで撮影し、1Kに変換して地上波で流していると思いますが、4Kは暗い! 8Kはもっと暗い?
4Kの自然番組や、旅番組は鮮明で、さすが4Kと眺めています。この作品でも、屋外シーンはそれなりに鮮明でした。
以前、火野正平の「こころ旅」(NHKBSプレミアム)で、それなりの経験を積んだと思われる中年の カメラマンが、「やっとピント合わせが巧くできるようになった」と発言し、火野正平に「おぃ、おぃ、今頃何を言ってるの、このカメラマンは」と、突っ込みを入れられてました。
そして、そのときカメラマンが「いや、8Kカメラのピント合わせは、かなり厄介」と反論したのです。これって「被写界深度」が浅いと云うこと?
屋外でこれですから、屋内の、ましてや、演出的に、照明を落としたり、逆光での撮影には、技術的に無理がありそうです。
黒沢演出として、優作と聡子の二人のシーンで、優作からの肩舐めのカットが多用されていましたが、二人の距離近いのに、聡子のピントに対して、優作の肩のピンボケ具合が酷すぎました。これは、表現手法ではなく、単なるカメラ技術的の問題のような?
薄暗いシーンや、逆光シーン、肩舐めカットの多いこの作品は、そもそも、8K作品向きではなかった? 8Kで撮ってはいけない作品?
しかし、カメラの技術的未完成が、ケガの巧妙的、想定外的、演出効果として評価され、第77回ベネチア国際映画祭で、最優秀監督賞につながったとしたら・・・。
監督の作品意図は、戦争の狂気が、あなたの平穏な日常を、いとも簡単破壊します。さあ、あなたなら、どうする?的 メッセージなのか?
それとも、いや、単なる男と女の関係を、戦時下を単なる背景として描いた作品?
まあ、どちらも、こちらも、観る人のご自由にですか?
うん。本日は、ここらで止めて置きます。
それでは、また次回。
よろしく。