バイオリンの里(続々々々々々々々)

 
 さて、私たちはもともと、日常、腕時計を持たずに生活している。で、気まま旅に時間を気にしたくなかった、という理由もあって、なくても何とかなるだろう、と、ドイツにも時計を持たずにやって来た。
 けれども、腕時計がないとやっぱり不便。まあ、これまで公共の壁掛け時計を見るか、公共の係の人に時間を尋ねるかだけで済ませてきたのだけれど、さて、ここミッテンヴァルトのユースには、その掛け時計が見当たらない。

 受付のおじさんに、「ウェア・イズ・ア・クロック(Where's a clock 時計はどこですか)?」と尋ねると、おじさん、
「ワット・タイム(What time 何時)、オクロック(o'clock 何時)のことか? 今何時か訊いているのか?」と答える。この東洋人、なんちゅう英語を話すんだ、と呆れた様子。

 ノー、ノー。私たち、二人とも腕時計を持っていないので、時間が分からないんです。……と言い訳する。
 で、今度はすんなり通じて、おじさんも「いや、このユースには時計はないんだよ」と答える。旅行するのに時計を持ってないなんて、ヘンな東洋人だな、とやっぱり呆れた様子。
 普通、持ってくるよね、時計。でも、普通、あるよね、ユースに壁時計……

 おじさん、親切に、受付の引き出しをごそごそやって、予備の腕時計を探してくれるのだが、そんなものは出てこない。で、
「モーニング・コールは要るかい?」と訊いてくる。

 まあ、朝にはきっと子供たちが騒ぎ出して、モーニング・コールの前に眼が醒めるでしょう。ノー・サンキューと断った。

 翌朝には案の定、子供たちの騒ぎ声で眼が醒めた。
 ……次の旅行には、腕時計を持ってくることにしよう。

 To be continued...

 画像は、ミッテンヴァルト、高原の小湖。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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