チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

第195話 サボテンとかつ丼

2013年11月30日 | チエちゃん
この秋、つぼみを持っていたサボテンが値下げ処分となっていたのでつい買ってしまいました。
見事にきれいな花を咲かせてくれました。来年も咲かせられるよう、管理がんばりたいと思います。
サボテンで思い出すことは、トクおばさんのことです。

トクおばさんは、おばあちゃんの弟賢次郎おじさんの奥さんです。
どういう経緯で、トクおばさんと行くことになったのか?
それはすっかり忘れてしまったのですが、チエちゃんはトクおばさんと飯坂温泉に来たのでした。
温泉に浸かったあとで、トクおばさんはチエちゃんに提案しました。
「チエちゃん、せっかくここまで来たんだから、熱帯植物園見て行こうか?」
「熱帯植物園?」
「あったかい国の珍しい植物が見られるんだよ。さあ、行こう!」
おばさんにそう促されれば、チエちゃんは従うしかありません。
電車の線路を渡り、狭く急な坂道を下ってしばらく行くと熱帯植物園に着きました。
当時、温泉の熱を利用した熱帯植物園があったのです。
園内は暖かく、バナナの木やハイビスカスなど、チエちゃんの知らない南国の植物がたくさんありました。
ウィークデーの日中ということもあって人影も疎らな園内をトクおばさんとチエちゃんはゆっくりと廻ったのでした。
そして、サボテンのコーナーに来ると、
「チエちゃん、おばちゃんはね。サボテンが大好きなんだよ。」と言ったのです。
それから、じっくり観察したあとで、トクおばさんは急にキョロキョロと辺りを見回しました。
チエちゃんが見ていると、トクおばさんはサボテンの一部をぽちっと折り、ちり紙に包んで着物の袖に入れてしまったのです。
「あっ!」とチエちゃんが小さな声を上げると、トクおばさんは唇に人差し指を立てて「シーッ!」というしぐさをしました。
それから、二人はそそくさと熱帯植物園を離れたのです。

帰り道、電車の駅に近づくと、トクおばさんはまた提案しました。
「チエちゃん、お腹すいたね。かつ丼食べて行こうか?」
かつ丼なんて、滅多に食べられません。食べたいのはやまやまだけど、いいのかな?
「さ、さ、こっちだよ。」
「うん!」
駅前食堂で、かつ丼をごちそうになりながらチエちゃんは子ども心に考えました。
トクおばさんが熱帯植物園に行きたかったのは、あのサボテンが欲しかったからなんだ。
そして、このかつ丼は「他の人には内緒だよ」という意味なんだ。

あ~あ、バラしちゃった!
もういいよね。時効だよね。トクおばさん!



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2 コメント

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そのカツ丼は (玉井人ひろた)
2013-12-01 19:10:58
そのカツ丼は、煮込み、ソースかつ、どっちだったのでしょう?
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>玉井人ひろたさん (チエ)
2013-12-02 22:13:48
玉井人さん、こんばんは
もしかして、駅前食堂の名物ご存知ですか?
今は、たぶんソースカツ丼が有名ですが、あの時食べたのは、玉子でとじた方です。
返信する

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