チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第166話 裂き織り

2009年06月18日 | チエちゃん
 その日、大きな風呂敷包みを背負ったおばあちゃんはチエちゃんと、とし江ちゃんの家を訪れました。

 とし江ちゃん家は茅葺屋根の古い大きな家で、熊んさまの隣にありました。
とし江ちゃんはチエちゃんのひとつ年下で、二歳違いのお兄ちゃん、カズあんちゃとも、季節保育所の顔馴染みでしたから、チエちゃんはよく遊びに行っていたのでした。
 この家には、お父さんさんとお母さんのほかに『スイおばちゃん』という人がいました。スイおばちゃんは、とし江ちゃんのお父さんのお姉さんで、いかず後家ということでした。
チエちゃんは「いかず後家」という意味がよく分かりませんでしたが、あまり良い意味の言葉でないことは感じていました。
おそらく、スイおばちゃんは若い頃に病弱であったか、或いは女手のなかった生家の切り盛りをするうちに婚期を逃してしまったということではなかったのかと想像します。

 スイおばちゃんは、当時でも珍しくなってしまった機織りのできる人でした。
チエちゃんが遊びに行くと、奥の部屋からは、トン、パタン、カラリ、トン、パタン、カラリ・・・と聞こえていました。
 チエちゃんのおばあちゃんが持ってきた荷物は、洗い張りをした古い着物や布団表の布地です。この布地を細く裂いて横糸とし、裂き織りとして再生してもらうためだったのです。

 織り上がった裂き織りは、薄手のラグのような布地で、元の布の色合いによって青や赤の段染めのような風合いでした。チエちゃんの家では何枚かはぎ合わせて、コタツの上掛けとして使っていました。
古くなった布を更に再生して使う、究極のエコですね。こんなことが、当たり前の時代でした。


※ 画像は、民家園に展示してあった織機です。まさに、裂き織りを織っているところのようです。