元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「イントルーダー 怒りの翼」

2008-02-06 06:36:50 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Flight of the Intruder)90年作品。昨今はイラク戦争に対する反省からか、ハリウッド映画もシビアな展開の戦争実録物を手掛けるようになったが、ほんの十数年前にはこのような“かなりタカ派”な脳天気なシャシンも作られていたのだから、トレンドの変化には改めて驚かされる。ベトナム戦争をバックにアメリカ海軍の爆撃機A-6(イントルーダー)の活躍を描く戦争映画だ。監督は「風とライオン」「若き勇者たち」などのジョン・ミリアス。

 “本国ではベトナム帰還兵が苦渋をなめてるって? バッキャロー! 誰のために戦争やってると思ってんだ”“和平交渉だあ? そんなヤワなこと言ってるからベトナムの野蛮人がデカイ面するんだ”“行け行けゴーゴー! ベトコンを殺せ!”とまあ、以上のようなことを言っている映画である。

 この映画の作者はベトナム戦争を騎兵隊のインディアン討伐ぐらいにしか思っていないんだろう(事実、救援に来た味方の戦闘機を“騎兵隊のお出ましだ”と言うくだりがある)。まったく何も考えていないというか、ここまできたらもう笑うしかない。

 ジョン・ミリアス監督は以前“ベトナム戦争をなぜやめたんだ。奴らを徹底的にやっつけておかなかったから、今になってこんなにアジア人がのさばるんだ”という発言をして周囲のひんしゅくをかった人物である。さらに、先の湾岸戦争では“前線の兵士にオレの映画を観せて戦意高揚に一役かってやろう”と本気で言ったらしい。この人を見ていると同じく湾岸戦争当時に“なぜバクダッドに中性子爆弾を落として連中を皆殺しにしないのか”と言ったアメリカのラジオ局のD・Jを思い出す。

 彼は決して体制べったりというわけではない。ただ、根本的にタカ派なのだと思う。戦うのが何よりも好きなのだろう。なんだかんだいっても、当時はアメリカ人にこういうタイプが少なくないというのは事実のようだ。

 肝心の戦闘シーンだが、確かにカネはかけているものの、演出がタルいので迫力に欠ける。「トップガン」と比べたら雲泥の差だ。演技陣もダニー・グローヴァー、ウィレム・デフォー、ロザンナ・アークェットと豪華な割にはまったく印象に残らない。特に主演の男優(すでに名前を忘れている)は全然ピリッとせず、不愉快な上に退屈、という困った映画である。
コメント
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