元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「テラビシアにかける橋」

2008-02-15 06:41:49 | 映画の感想(た行)

 (原題:Bridge to Terabithia)昨年観た「パンズ・ラビリンス」と似た設定の映画だが、こちらの方が出来が良い。理由は、本作が高い普遍性を獲得しているからだ。

 「パンズ~」がスペイン内乱時の不穏な空気と子供の無邪気な想像という、いかにも“相反するモチーフを二つ並べれば面白いだろう”といった、作者の安易な思い付きから一歩も出ていない平板な展開に終始していたのに対し、この映画は誰しも子供時代に体験したであろう屈託や心の揺らぎを丁寧に描いている。ファンタジー場面はそれを補う素材に過ぎず、必要以上に出しゃばることもない。

 舞台はアメリカの田舎町。いじめられっ子の少年と、彼のクラスの転校生で隣に越してきた家の娘とのコンビは、片や友達付き合いよりも絵を描く方を好み(けっこう上手い)、片や優等生ながら考え方がユニーク過ぎて周囲から浮いている存在で、いわば似たもの同士が意気投合しているように見えるが、映画は二人を決して孤立させない。

 彼らは森の奥を“テラビシア”と名付け、リスや鳥を邪悪なクリーチャーに見立て、大木を巨人になぞらえた想像の世界に入り浸っているように見えるが、実はそこは厭世的なオタク趣味とは一線を画す“外の世界にも通じている空間”である点は納得できる。二人を取り巻く環境は厳しいが、彼らは“テラビシア”で自分たちのイマジネーションを発散させ、明日を生き抜く糧とする。実は“テラビシア”は単なるファンタジー世界ではなく、二人の淡い恋のステージでもあるのだが、互いを必要とする気持ちが周囲との関係性をも徐々に好転させてゆく過程も、実に説得力がある。

 終盤近くの暗転は“ここまでしなくても”と思う向きもあるかもしれないが、原作者のキャサリン・パターソンのシビアな体験が元になっているだけに、作劇に緊張感と切迫感を与えることに成功していると思う。辛いことがあっても“テラビシア”はいつも心の中にある・・・・という結びは感動的だ。

 これが長編実写映画デビューとなるガボア・クスポの演出は余計な力みがまったく見られないスマートなもの。マイケル・チャップマンの撮影およびSFX班の頑張りも特筆すべきである。キャスト面ではナイーヴな眼差しが印象的な少年役のジョシュ・ハッチャーソンもいいが、メインはヒロイン役のアンナソフィア・ロブだろう。同世代のダコタ・ファニングなんぞ忘却の彼方に押しやってしまうようなノーブル過ぎる容貌、特にあの猫みたいな目がヤバい(^_^;)。10年後・20年後が楽しみな大物子役である。

 父親役のロバート・パトリックもイイ味出してたし、音楽教師役のズーイー・デシャネルは主人公がのぼせるのも当然だと思うほど魅力的だった。子供向けファンタジーのレベルを超えた秀作で、より広い層に接してもらいたい映画である。
コメント (2)
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