気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-03-04 18:29:18 | 朝日歌壇
雪解の薄ら日の射す田圃道田螺(たにし)の穴の鳴りて春なれ
(長野県 沓掛喜久男)

朝焼けに上半身は染められて路上にベーグル売る男あり
(アメリカ 悦子ダンバー)

葱とりに出でたる庭のあたたかくそのまま草取る人となりたり
(厚木市 石井美千代)

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一首目。春の訪れを感じさせる歌。田螺が私にはわからないが、呼吸して音をさせているのだろう。自然を詠った作品には、こころが安らぐ。
二首目。早朝からベーグル売りの仕事をする男。労働の歌は、それだけで尊いものに思われる。上半身という切り取り方がうまい。
三首目。庭があたたかいと、気分が良くなって、ついでに草取りもしてしまう。羨ましいような歌だ。


短歌人3月号 3月の扉

2013-03-01 22:26:21 | 短歌人同人のうた
やけに澄む電話のベルは階段をかけおりる間に止みてしまへり

階段の途中で止まり泣く人がゐてもいいのにわたしの駅に

(大越泉 おりてゐるなり)

じんせいは疲れるもので階段に腰掛けたりする この小学生も

丘の石段上り切るとき悲しいのだと気づき クヌギと風に吹かれる

(久保寛容 だいじょうぶ)

風の話が聞える場所を知っていた水色の少女だったわたくし

少しずつ世界が昏くなるという祖母と東銀座の階段下りる

(高田薫 風の話が聞える場所)

階と階つなぐ汚れた平面であれど優雅に踊り場とよぶ

階段をのぼらなくては行き着けぬカフェがいくつもある吉祥寺

(若尾美智子 夜と階段)

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短歌人3月号、3月の扉。今月のお題は「階段」。

鈴の音のとほく聞こゆる夕ぐれの風の道なる外の階段
(近藤かすみ 『雲ケ畑まで』)