気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

禽眼圖 楠誓英 書肆侃侃房

2020-01-25 01:04:49 | つれづれ
片側を闇にのまれてそよぐ樹を観ればかつてのわたくしならん

灯のしたにとりどりのパン集まりて神の十指のごとく黄昏

軒下に寄れば自動でつく灯りものかげ消えて死後のあかるさ

きみの変へたサドルの位置をそのままに乗りて木末に頰ぬらしゆく

亡き兄のかはりになれぬ日の暮れに礫のひとつは波紋なく落つ

さるすべり炎天にひらく形にて暗くよぢれる臓物(わた)もつわれら

臓(わた)おほふ筋肉(すぢ)はつめたく締まりゐて立てる歩哨に細雨は伝ふ

飛びたつた空の深さをおもひたり有刺鉄線にこびりつく羽根

獣肉を下げて帰らむきりぎしの夜をみひらく禽(きん)となるまで

もう一度弟になりたし鉄橋をすぐるとき川のひかりは満ちて

(楠誓英 禽眼圖 書肆侃侃房)

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