気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

能登往還 三井ゆき歌集

2007-11-11 01:59:24 | つれづれ
てのひらに透きしみどりの銀杏を乗せて太古の風を呼び出す

ゆきどころなきたましひの流れ出でひびく夜ごとの街の底鳴り

赤子なき農村地帯の乳母車春のうららを猫の仔ねむる

ふくふくと猫は肥ゆれど過疎出でて帰らぬ彼らわたくし

単調に咲けるアメリカ花水木奥行のなき花のあかるさ

吹かれつつ橋を渡れど風狂にゆけざるこころ土より受けし

(三井ゆき 能登往還 短歌新聞社)

************************

三井ゆきのむかしの歌集を読む。この時期、父親の看病のため、月に一、二度故郷の能登に行き病院で三泊して帰京していたとあとがきにある。
過疎地帯となった故郷と東京の行き来の中で、思うところが多かったのであろう。
最新歌集『天蓋天涯』(角川書店)も読んでみたい。



最新の画像もっと見る