気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

さくらあかり  加藤隆枝  つづき  

2010-08-23 00:44:58 | つれづれ
かなしみの縁より淵へおりてゆく冬のさなかのうさぎの忌日

はるるるる……語尾ふるわせてくる春の寒のもどりに身をふるわせる

どこまでもさくらあかりの細道を異界の人にひかれて歩む

風の日にひとり遊びをする男(お)の子「ながれごっご」と言いて吹かるる

何びとも寝入るまぎわにほほえむと聞きたる話こころを満たす

しまり雪ふみゆくときにクックックッとブーツはもらすしのび笑いを

正装の二羽のつばめがやってきて小屋の間借りを申しでる朝

<まばたき>を<目のつぶやき>といいたる子 仔牛のようなうるむ目をもつ

歳時記のならぶ書棚に春の巻一冊分のすきまがありぬ

(加藤隆枝 さくらあかり 砂子屋書房)

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加藤隆枝さんが短歌を志すきっかけとなった永井陽子さんの命日は、一月二十六日。永井さんは卯年卯月うまれなので「うさぎの忌」とよんでひそかに偲んできたと、あとがきにある。「こころねのわろきうさぎは母うさぎの戒名などを考へてをり」(てまり唄 永井陽子)という歌を思い出した。
四首目。加藤さんは、小学校の先生をしておられるらしく、生徒たちを温かく見た歌も楽しい。「ながれごっこ」の一連を読んで、わたしも子どもに戻って、この遊びをしてみたくなった。
七首目。正装のつばめもメルヘンを感じさせて面白い。
秋田県の冬は雪が多くて、厳しいのだろうな・・・。春の歌が多いのも、そのせいかも知れない。

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