大陸の風に胞子を飛ばさむと厚き株式発行目論見書(プロスペクタス)を積む
子の髪が最初に乾く風呂上がり五月の夜の闇をはじきて
鉄板に押し付けられて生きながら赤と白とに分かれゆく海老
アマゾンの首狩族の干し首はくろぐろと拳大のおほきさ
北京(ベイジン)のJETROニセモノ展示館ホンダもどきの出来栄えよろし
ふた月もたたぬ間に「お」が「おと」に「おとしやん」となり辛夷が咲きぬ
底値だらうかと株を買ふ 落ちてくるナイフを素手で受け止めるごと
父を生き夫を生き管理職を生き僅かにわれを生き時間は 瀧
絶巓に立ちてわが掌にアフリカのみどりを映す空を持ち上ぐ
(本多稜 游子 六花書林)
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第13回寺山修司短歌賞に選ばれた本多稜の『游子』を読む。
証券関係のお仕事で世界中に出張し、山にも登るという超多忙の生活の中、短歌に取り組まれている。職場詠、旅行詠、家族詠があり、多彩で読んでいて飽きない歌集だった。
短歌を作る技をしっかり持っていると、出来事を日記に書くように、短歌が作られるという印象を受ける。構えなくても日常そのものに、短歌の材料は一杯ある。特に説明するまでもなく、一読してわかる歌ばかりなのも嬉しい。
6首目の「おとしやん」の歌も、お子さんの成長をよく観察して、捕らえていると思う。結句の「辛夷が咲きぬ」も美しい。
8首目。「時間は 瀧」の一字開けが聞いている。
9首目。アフリカの山に登山した歌だろう。スケールが大きい。自然も彼の人生も。
たそがれの水面を跨ぐ御影橋暮れてかたへの灯は枇杷のいろ
(近藤かすみ)
子の髪が最初に乾く風呂上がり五月の夜の闇をはじきて
鉄板に押し付けられて生きながら赤と白とに分かれゆく海老
アマゾンの首狩族の干し首はくろぐろと拳大のおほきさ
北京(ベイジン)のJETROニセモノ展示館ホンダもどきの出来栄えよろし
ふた月もたたぬ間に「お」が「おと」に「おとしやん」となり辛夷が咲きぬ
底値だらうかと株を買ふ 落ちてくるナイフを素手で受け止めるごと
父を生き夫を生き管理職を生き僅かにわれを生き時間は 瀧
絶巓に立ちてわが掌にアフリカのみどりを映す空を持ち上ぐ
(本多稜 游子 六花書林)
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第13回寺山修司短歌賞に選ばれた本多稜の『游子』を読む。
証券関係のお仕事で世界中に出張し、山にも登るという超多忙の生活の中、短歌に取り組まれている。職場詠、旅行詠、家族詠があり、多彩で読んでいて飽きない歌集だった。
短歌を作る技をしっかり持っていると、出来事を日記に書くように、短歌が作られるという印象を受ける。構えなくても日常そのものに、短歌の材料は一杯ある。特に説明するまでもなく、一読してわかる歌ばかりなのも嬉しい。
6首目の「おとしやん」の歌も、お子さんの成長をよく観察して、捕らえていると思う。結句の「辛夷が咲きぬ」も美しい。
8首目。「時間は 瀧」の一字開けが聞いている。
9首目。アフリカの山に登山した歌だろう。スケールが大きい。自然も彼の人生も。
たそがれの水面を跨ぐ御影橋暮れてかたへの灯は枇杷のいろ
(近藤かすみ)
小さなお尋ねひとつ、よろしいですか?
八首目の<父を行き>なのですが、同じ音の他の言葉が「生き」なので、ふと迷いました。でも、やはり「行き」がも知れませんね?
確かにご指摘通りです。私の誤植でした。早速訂正します。
ありがとうございました。
こちらこそ、貴重なお時間での早速のご返事に感謝致します。
これ以上、続けると「やぎさんゆうびん」になるので、この辺で(笑)