気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人10月号 同人のうた その2

2011-10-21 23:20:00 | 短歌人同人のうた
何ごともぶつりと切れるときがあるこれが最後となるかも知れず
(依田仁美)

ゴンドラの名はファンタジー号、そのかみの風船おじさんこそファンタジー
(生沼義朗)

ふたたびの夏はきたりて白粉花の尖端がふとくちびるのかたち
(西村美佐子)

ただひとり生き残りゐる者のごと午前四時半のかなかなを聞く
(三井ゆき)

会えば損したような気になる人と居て茶房の庭の青葉が翳る
(西勝洋一)

傘なんか持たずささずの野良猫がよしずの蔭にひそみいるなり
(今井千草)

公園にひなたとひかげ雪白のさるすべり散るベンチを選ぶ
(渡英子)

放射能雨に濡れれば禿げるぞと五歳の吾の坊ちゃん刈りも
(藤原龍一郎)

窓といふ窓は同じき表情にて高層マンション空に硬直す
(蒔田さくら子)

告別の夜のろうそくに照らされて膝に小さなハンカチを置く
(川田由布子)

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短歌人10月号、同人1欄より

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2 コメント

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こんばんは、 (teruo)
2011-10-22 23:35:52
〈ただひとり生き残りゐる者のごと午前四時半のかなかなを聞く〉
(三井ゆき)

二年ほどまえに、
〈冬の夜はただわれひとり生くるごと熾火に豆をくつくつと煮る〉
と詠んだ記憶があります。共有する思いに出あったとき、なつかしい気持になります。
ただし、熾火で豆を煮ていたのは母親、すべて追憶のなかのワンシーンにすぎませんが。

あと、
〈会えば損したような気になる人と居て茶房の庭の青葉が翳る〉
(西勝洋一)
が残りました。
Unknown (かすみ)
2011-10-23 10:06:50
teruoさま

御作は、豆を煮るという具体が出たのがいいと思います。

会えば損した・・の歌は私も共感します。
マイナスのことは言いにくいものですが、それを敢えてしたところが勇気があるし、下句はあっさりと納めて巧いと思いました。