道なりに走つてゆけばよいものを 吾(あ)は立ち止まり又はみ出しぬ
(柚木圭也)
坂道を下れば夏の海見えて青に眩める少女のわれは
(木曽陽子)
滝下に立ちてあふげる朝の水やや青みたり梅雨のをはりは
(大谷雅彦)
濡れてゐたり乾いてゐたりする舗道 囚はれ人の如く見おろす
(佐々木通代)
Tシャツと口紅だけの荷物なり夏の途中を寄り道すれば
(鶴田伊津)
あまやかなわれの腐臭を感じをり木苺のジャム煮るたいくつに
(橘夏生)
蓮の花咲かんとすなり大切なもののかえらぬと思う朝(あした)を
(佐藤慶子)
いまだ明るき夕べの空に啼き出だしそのまま夜に落ちてゆく蝉
(大森浄子)
「黙祷」の声はラジオより流れ死者との距離の近き八月
(森澤真理)
涼やかにデルフィニウムの深き青眼鏡をふいに替へたくなりぬ
(望月さち美)
********************************
短歌人10月号、同人1欄から。
(柚木圭也)
坂道を下れば夏の海見えて青に眩める少女のわれは
(木曽陽子)
滝下に立ちてあふげる朝の水やや青みたり梅雨のをはりは
(大谷雅彦)
濡れてゐたり乾いてゐたりする舗道 囚はれ人の如く見おろす
(佐々木通代)
Tシャツと口紅だけの荷物なり夏の途中を寄り道すれば
(鶴田伊津)
あまやかなわれの腐臭を感じをり木苺のジャム煮るたいくつに
(橘夏生)
蓮の花咲かんとすなり大切なもののかえらぬと思う朝(あした)を
(佐藤慶子)
いまだ明るき夕べの空に啼き出だしそのまま夜に落ちてゆく蝉
(大森浄子)
「黙祷」の声はラジオより流れ死者との距離の近き八月
(森澤真理)
涼やかにデルフィニウムの深き青眼鏡をふいに替へたくなりぬ
(望月さち美)
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短歌人10月号、同人1欄から。