気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

家長 小高賢

2008-01-09 00:48:35 | つれづれ
はげまして書類に見入るイトーキの椅子に支える一日長し

われに出来子規果たせざるものは何五月闇なる真夜に腕くむ

勤務(つとめ)より帰りし部屋を充たしたる酸ゆき蜜柑の香は浄かりき

息かけて眼鏡の玉をティッシュとううすき時世の紙にて磨く

鴎外の口ひげにみる不機嫌な明治の家長はわれらにとおき

夕餉おえ子は王と化しファミコンの地球を救う闘いに赴(ゆ)く

暴力は家族の骨子-子を打ちて妻を怒鳴りて日日を統べいる

(小高賢 家長)

***********************

小高賢作品集を少しずつ読んでいる。『家長』は第二歌集。サラリーマン(編集者)として働く哀感を詠った歌に共感できた。
歌集の題にもなった鴎外の口ひげの歌は、特に有名。
しかし、七首目に取り上げた暴力の歌は、いただけない。フィクションとして詠んだ歌なのか、本心なのかわからないが、私にはこれを歌集に載せるという神経が理解できない。何か深い思惑があってのことだろうか。



最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ()
2008-01-09 04:04:23
あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願します。

小高さんは、奥村晃作さんと同じか、それ以上に、リアリズムを追求したいのではないでしょうか。



しかし、うまいなぁ、と、何度も何度も感嘆させられるんですが、塚本邦雄さん、小高さんは、「一日十首」を実行していたそうですね。

一年にすると、3650首。もう、作歌体力が、ハンパじゃないです。



「質」のこともあるんでしょうが、多く作るに越したことはないんですね。

僕も、去年よりは一首でも多く、いい歌が作れるようにがんばりたい、というのが、今年の抱負です。
返信する
Unknown (tamaya)
2008-01-09 04:30:23
この歌集が話題になっていた頃、「家長」という言葉がピンと来ませんでした。それも堂々と歌集のタイトルに掲げるとはどういう了見なんだろう? と思っていました。そういう批判のような発言は「歌壇」のひとたちからは出なかったようなので(むしろ「家長」というタイトルを掲げる意匠を了解するような批評が多かったと思います)、「歌壇」の皆さまの時代感覚っていったいどうなってるのだろう…? と思ったものでした。今でもやはりその感覚は残っています。
返信する
Unknown (かすみ)
2008-01-09 10:14:01
森さん あけましておめでとうございます。
小高賢さんが一日五首を課題とされていた話しは知っています。私など、一日一首できれば、ほっとします。朝に出来ればあとは安泰という気分。これではいけませんね。

tamayaさん こんにちは。
『家長』には、明治の文学者を題材にした歌がたくさんあるので、その一部として森鴎外が出てきて、歌集の題名になったのでしょう。あとがきに上野千鶴子の本の引用などもあり、わかってやっていらっしゃるのでしょうけれど。私は、まんまとその策略に乗ったのかもしれません。
返信する
Unknown (O.H)
2008-01-09 18:24:40
初めまして。いつも楽しく拝読しています。
3首目、山崎正和さんの『鷗外 闘う家長』という評論を思い出しました。
返信する
Unknown (O.H)
2008-01-09 18:27:47
訂正。失礼しました。5首目の鷗外の歌です。
返信する
Unknown (かすみ)
2008-01-09 23:42:09
O.Hさま はじめまして。
山崎正和氏は、劇作家でしたっけ。よく知りません。
家長という言葉は、明治大正の匂いのする言葉ですね。
返信する
『鷗外の~~』 (あづまはや)
2008-01-12 16:24:27
 近藤さん、明けましておめでとうございます。
 小高賢さんは私の大好きな現代歌人の一人であり、かつ、本日近藤さんがお取り上げくださった『家長』は私の愛読書ですので、特に興味深く拝見させていただきました。
 ところで、掲載された小高作品のうち、五首目の「鴎外の口ひげにみる不機嫌な明治の家長がわれらのとおき」は、正しくは、「鷗外の口ひげにみる不機嫌な明治の家長はわれらにとおき」でしょう。この歌は、歌集名『家長』の典拠となった歌であると同時に、小高さんの代表作品の一つと目されている著名な作品ですから、ご訂正なされた方が宜しいでしょう。
返信する
Unknown (かすみ)
2008-01-12 18:36:46
あづまはやさま こんばんは。
ご指摘ありがとうございました。早速訂正しました。
小高さんにも失礼なことをしてしまいました。
今後このようなことのないよう、充分注意いたします。本当にありがとうございました。
返信する