かの夏の夕べ夕べに無毛なるつむり洗ひきしやぼん泡立てて
(酒井佑子)
ゆふぐれの道にあゆみをとめてゐる白曼珠沙華ひとむらの前
(青輝翼)
鳩の湯の煙突いまは外されて母住む家の目印は消ゆ
(関谷啓子)
妻が茸になってうようだ 午後いっぱい栗コーダーカルテット聴いてる
(生沼義朗)
アフリカ系をとこの放つ香水の紙一重なる獣臭ぞよき
(紺野裕子)
パール入りプレストパウダー砕け散りとほき砂丘のひかりを撒けり
(洞口千恵)
意に添はぬなりゆきなれど今日はけふ夕の厨に菜を茹でてをり
(古河アヤ子)
天国ならどこにでもある新世界の串カツ屋の列にふたり並んで
(橘夏生)
「土佐源氏」を読んでいた川本浩美
夜を逃げてどこかの町の橋の下しずかに生きておりはしないか
(谷村はるか)
高三郎の名前の由来は不明なりと解らぬことのあるはよきかな
(高田流子)
**************************************
短歌人11月号、同人1欄より。
(酒井佑子)
ゆふぐれの道にあゆみをとめてゐる白曼珠沙華ひとむらの前
(青輝翼)
鳩の湯の煙突いまは外されて母住む家の目印は消ゆ
(関谷啓子)
妻が茸になってうようだ 午後いっぱい栗コーダーカルテット聴いてる
(生沼義朗)
アフリカ系をとこの放つ香水の紙一重なる獣臭ぞよき
(紺野裕子)
パール入りプレストパウダー砕け散りとほき砂丘のひかりを撒けり
(洞口千恵)
意に添はぬなりゆきなれど今日はけふ夕の厨に菜を茹でてをり
(古河アヤ子)
天国ならどこにでもある新世界の串カツ屋の列にふたり並んで
(橘夏生)
「土佐源氏」を読んでいた川本浩美
夜を逃げてどこかの町の橋の下しずかに生きておりはしないか
(谷村はるか)
高三郎の名前の由来は不明なりと解らぬことのあるはよきかな
(高田流子)
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短歌人11月号、同人1欄より。
まんじゅしゃか、は天にひらく華という。ゆうぐれの中の白華(びゃくか)は浄夜するかのようである。この世はどうにもならない闇もある。作者にもあるやもしれぬ。歩みをとめてこの歌人はなにをみつめていたのだろう。われ沙門の瞑想にも似るすがたである。