気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

青嵐  三宅はる

2011-12-11 00:17:57 | つれづれ
ふるさとの町医の大門「ぎいいつ」と深夜閉せしが今も夢に出づ

高校用大字(おおじ)英和の辞書買へり、歌詞をいくつも引いて楽しむ

乱視また進みし頃か、きらきらと月が三つ四つ連ね華やぐ

取組一分(いつぷん)力士が背(そびら)桜色に見る見る染まりくる美しさ

新劇の独白(モノロオグ)めきながながと貨物列車が夜の底を縫ふ

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家族写真もう誰も居ず青嵐

青梅雨や千尋(ちひろ)の底の日暮時

夢みるや蹌踉(そうろう)として冬の蠅

獣めくバイクの屍(かばね)大枯野

青嵐(せいらん)に紛れゆきたし跡もなく

(三宅はる 青嵐 創英社)

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三宅はるさんは、九十七歳。「鱧と水仙」を購読なさっているご縁で、第三歌・句集を送っていただいた。いまは熱海湯河原の施設に入っておられ、鱧と水仙の古くからの大変熱心な読者だと聞く。大正三年生まれで長い間教職に就いておられ、七十歳台になってから短歌と俳句をはじめられた。
だんだん目や足が悪くなっておられるようだが、辞書で英語の歌詞を引いて楽しむ歌など、若さの秘訣を見る気がする。長生きをするということは、家族とつぎつぎ分かれるという現実に遭うことだ。そのなかで短歌、俳句を支えに生きてこられた。表現は若々しく、学ぶところは多い。ますますのご長寿をご健詠をお祈りしたい。

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